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目利きが選ぶアレやコレ
第30回:旅先はどう決める

イラストレーション・naohiga

旅が忘れ難いのは、何かと重たい日常を軽やかにしてくれるせいかもしれない。旅のタイミングは、人生のタイミングとシンクロする。どんな旅に出かけるか、どんな時に出かけるか。その選択肢は、少し先の未来を決めるものだから

01 Shingo GOKAN

ナイトシーンを魅了する
世界一のバーテンダー

後閑信吾

片道切符しか買ったことのない旅を、
往復切符で完結する。そんな旅に出かけたい

29歳の時にカクテルの世界大会で優勝して以来、どこかに招聘されて各国を旅することが多くなりました。去年のフライトは100回を超え、もはや旅は日常。けれど、行き先は基本的にバーカルチャーのある場所なので、パリへ10回、メキシコへ10回など、自分が選択してどこかへ行くということがない。

若手の育成のため、そんな旅は今後も続けていくつもりではあるけれど。仕事先から仕事先へと飛び回る片道切符の旅ではなくて、そろそろ往復切符で、自分で行きたい場所を決めて旅することをしてみたい。惹かれるのは、オーロラを観る、ペルーのレインボーマウンテンに登るなど、シンプルに自然の驚異を実感できるところ。

以前、とある方に「ワーカホリックですか?」と質問されたことがありました。僕にとって旅する日常はワーカホリックだったのかも……。仕事ではなく、純粋に旅を楽しむ、そんなことを始めてみようかと思っているところです。

Shingo GOKAN

2012年世界最大規模のコンペティション「Bacardi Legacy Cocktail Competition」に米国代表として出場し、優勝。2017年、バー業界のアカデミー賞といわれる「Tales of the Cocktail」の「International Bartender of the Year」を受賞。「Asia’s 50 Best Bars」では、2019年にバーテンダーが選ぶ「Altos Bartenders’ Bartender」を、2021年にはバー業界を象徴する人物に贈られる「Roku Industry Icon Award」を受賞。最も注目されるバーテンダーである。

Instagram @shingo_gokan

02 Yuko NAITO

愛と熱血で抜群のコミュ力を
発揮するフリーアナウンサー

内藤裕子

移ろう四季を感じたら旅に出る。
その時だけの景色を求めて

まだ駆け出しの20代、NHK大阪放送局にいた時のことでした。母と奈良を旅して、奈良ホテルで朝の茶粥をいただいたんです。香り高い緑茶でサラリと炊き上げられたその美味しさは、身体中に染みわたって幸福感で満たされました。

「裕ちゃん、服を買うのもいいけれど、こうして旅に出なさい」。母が言ったその言葉は、旅に出る弾みをつけてくれたかもしれません。その後は、初夏の軽井沢でボランティアのガイドさんに連れられ、提灯片手に会いに行く塩沢村の蛍、短い休みができたら名湯を求めて出かける箱根、伊勢まで車で行くことも。

旅に出るタイミングは、四季の移り変わりを感じるようなほんの些細なこと。道中を楽しみつつ、案外行き当たりばったりで。森の匂いや野菜の味などで五感を解放するような旅をしています。人生を豊かにしてくれる体験は、それ自体が宝物。雑誌で見たり友人から話を聞いたりしてウィッシュリストに書き込まれた"いつか行きたい旅先"は、私のエネルギー源になっています。

Yuko NAITO

東京女子大学卒業後、アナウンサーとしてNHK入局。『ニュース7』「首都圏ネットワーク」のキャスター、『あさイチ』リポーター、大河ドラマ『篤姫』の紀行ナレーションなどを担当。著書に『内藤裕子のカレー一直線!!』(池田書店)。カレー大学院卒業後、"カレーアナ"としてカレー愛に溢れた日々を送る。

Instagram @yukonaito713

03 Kazuko HAYASAKA

美と健康と幸福を探求し、
森暮らしを実践する植物療法士

早坂香須子

自分と向き合う旅から
好奇心に導かれて出かける旅へ

18歳の時に2週間ほどサンフランシスコへ留学したのを皮切りに、私の人生には旅がつきものになりました。20代、30代は旅先で地元のスーパーに行くだけでも楽しくて、休みが取れれば海外へ。40代になってからは、タイのヨガのアシュラム、フィリピンのメディカルウェルネス・リゾート「ザ・ファーム」など、疲れ切った体を癒すのが旅になっていました。

けれど、疲れては癒すローテーションを繰り返すうちに、何のために生きているんだろ?仕事じゃない時間も楽しんでいいのでは、と意識が変わり、旅の形も変わってきたんです。自分と向き合う旅から、好奇心に導かれて発見する旅になってきたんですね。家を建てよう→人と森との関係を学びたい→ドイツのエコホテルに行ってみよう→エネルギー問題について学んでみよう、など。

安いチケットが出たというのでヘルシンキに行ってみると、デザイナーのアアルトの家を訪問する偶然に出合えたり。温泉に行く旅も大好き。昔のようにガチガチに計画を立てた旅ではなく、流れに身を任せる。そんな旅に出かけるようになってきましたね。

Kazuko HAYASAKA

メイクアップアーティスト、植物療法士。長野県にある森林との出会いから、森の再生をしながら自然の中で生きることを選ぶ。同時にKAZTERRAMORI名義で作家活動を開始。2024年10月には、文筆家・服部みれい氏と共著である詩画集「わたしの中にも朝焼けはある」(河出書房新社)を上梓。

Instagram @kazukovalentine

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さまざまな分野で活躍する目利きたちによるコラム【目利きが選ぶアレやコレ】。今回は目利きたちの“旅先はどう決める”をご紹介。