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目利きが選ぶアレやコレ
第20回:人生で最初の大きなお買い物は?

イラストレーション・naohiga

人生の中には忘れられない“大きなお買い物”がある。その最初の決断は、まさに新しい一歩を踏み出した瞬間だと言えるのではないだろうか。ほしかった憧れのものを手に入れる喜び。その思い出を語っていただいた。

01 Yuya HASEGAWA

足元から世界を変革する
靴磨きの世界チャンピオン

長谷川裕也

中学生で買ったブランド靴。
そして最高峰のジョン・ロブ。
それらは道標のように今に繋がる

人生で最初に“清水きよみず買い”をしたのは、中学2年。当時、東京コレクションなどで輝きを放っていたKOJI KUGAのチェッカーブーツでした。お昼代の500円を貯めた4万円の大人買い。もう今は持っていないのですが、あの時の高揚感が今の仕事に繋がっているのかもしれません。

大人になってからの大きな買い物も、やはり靴。店を始めて間もなく、イギリスでジョン・ロブの工房を見学させてもらった時のことでした。最高峰の靴を履いてみたいという思いとお礼を兼ね、オーダーしたい旨を伝えると、それまでカジュアルに話をしていたスタッフが、急に語尾に敬意を表する“Sir”をつけ出した。ジョン・ロブでオーダーする意味を実感した瞬間でしたね。

靴代が2400ポンド、シューツリー(シューキーパー)が740ポンド、日本に送ってもらった関税が96,000円。柔らかな履き心地も驚愕だったけど、あらゆる意味で貴族や上流階級に愛される靴であることを教えてもらった思い出になりました。

Yuya HASEGAWA

1984年生まれ。20歳の時に路上から独学で靴磨きをスタート。2008年には世界初のカウンタースタイルの靴磨き店「Brift H」をオープンする。2017年にロンドンで開催された第一回世界靴磨き大会にてみごと優勝。名実ともに世界一の靴磨き職人の称号を手にいれる。著書に『靴磨きの本』など。

Instagram @yuya.hasegawa.brift.h

02 Karen KIRISHIMA

観葉植物と葉山暮らしを堪能する
ライフクリエイター

桐島かれん

職人によるカシミール地方のニードル刺繍。
宝物になった博物館級のストール

ブランド品の類には食指の動かない私が、唯一心を揺さぶられるのが緻密に仕上げられたハンドクラフト。最大のお買い物といったら、カシミール地方で織られたニードル刺繍のストールでしょうか。

出合ったのは、自身の店を始め、仕入れのためにインドを訪れるようになった頃。この国での買い付けには忍耐が要るんです。まずチャイを飲み交わし、品定めや値段交渉を重ねて信頼関係を築いていくことで初めて“奥の扉”が開く。ようやく「ミュージアム・ピースを見てみるか」と出てきたのが、黒地にカラフルな糸で隙間なく刺繍されたストールでした。

カシミアの中でも一頭に一枚取れるかくらいの稀少なパシュミナを使用し、1~2年の歳月をかけて熟練職人のサイン刺繍が施される。覚悟を要するお値段でしたよ。今でも大切すぎて仕舞い込んである。けれど、たまにその軽くて柔らかな羽織心地を確かめてみると、本当に宝物だなと思える珠玉の一品なんです。

Karen KIRISHIMA

1964年生まれ。1986年に大手化粧品会社のイメージキャラクターに起用され、以降モデル、女優、歌手、ラジオパーソナリティと多方面で活躍。1993年に写真家、上田義彦氏と結婚、四児の母。現在は、ファッションブランド「ハウス オブ ロータス」のクリエイティブディレクターとして世界中を飛び回る日々。

Instagram @houseoflotus_official

03 Maho TOYOTA

絵画、京友禅からDIYまで
創作の舞台を広げるクリエイター

とよた真帆

20歳で買った伊豆の別荘。母や叔母、兄家族、
何より私の拠り所となった特別な家

最初の大きなお買い物といったら、それは間違いなく20歳で買った伊豆の別荘。一度家を失った経験のある母から「家が欲しい」と囁かれて育ったせいか、母のために家を買うことは使命(ミッション)のようなものでした(笑)。

別荘といっても、築十数年、トタン屋根の日本家屋をリフォームしたもの。バブルの全盛期、東京では手が出ず伊豆になったのだけれど、母が毎週末のように猫を連れて出かけたり、兄家族の子どもたちが休みを過ごしたり、一時期は叔母が住んでいたり。仕事でハードな日々を過ごす中、終わったらゆっくり過ごそうという拠り所だったし、亡き夫も伊豆で人生を終えたいと言うぐらい気に入っていました。

それは家族にとってかけがえのない場所になってくれたのです。思い出を抱えながらもだいぶ年季が入って来た昨今、次は私のDIYの楽しみの舞台として、末長く付き合ってもらおうと思っているんです。

Maho TOYOTA

1967年東京生まれ。女優・モデルとして活動する。芸術全般に造詣が深く、絵画の個展や京友禅のデザインなども手がける。最近の趣味は石収集。美味しいお店巡りが高じて一軒家レストラン『ロジエ』をオープン。2024年はデビュー40周年の記念すべき年になる。

Instagram @maho_toyota

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さまざまな分野で活躍する目利きたちによるコラム【目利きが選ぶアレやコレ】。今回は目利きたちの“人生で最初の大きなお買い物は?”をご紹介。