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目利きが選ぶアレやコレ
第31回:子どもの頃の夢

イラストレーション・naohiga

どんなことでもできる可能性に満ちていた子どもの頃、想像していた未来とはどういうものだっただろうか。遠い記憶を掘り起こしてみたならば、今ある自らの原点が見えてくる。そんな幼い頃の夢を、今、振り返ってみる

01 PANWEI

\ 初登場!/
魔法のレシピで美と健康を叶える
料理研究家

パン・ウェイ

放課後に何を食べようかと考えていた。
夢ではなく"食欲"に導かれた未来

子どもの頃の写真に写る私は、すべて食べ物を持っているほどの食いしん坊で(笑)、放課後が近づけば気もそぞろ。裏門にやってくる屋台のお手伝いをしては味見させてもらったり、祖母のおやつを目指して急いで帰ったりするほどでした。

その祖母は薬膳の基本を大切に、食事を作ってくれる人でした。母が病弱だったこともあり、秋は夏の余熱を取って肺を潤すナスなどの白い野菜を、肝臓が弱る春は酸味をとるよう、冬は乾燥と風邪予防にハチミツを舐めてから出かけなさいなど、食が健康を支えていることを教えてくれたのです。体調に合わせたご飯は、とても美味しかった。

そんな中、北京で初めてできたフレンチの店で、盛り付けの"美しさ"に衝撃を受けたのです。中国料理って大皿にどんと盛り付けるのが普通だったので……。そんな理由から、幼い頃の夢というのであれば、中国料理をもっと美しくしてあげたい、ということだったでしょうか。見た目も美味しそうで、身体にも"効く"料理。現在の私があるのは、そんな"食いしん坊"の望みを叶えたかったからかもしれません。

PANWEI

中国・北京生まれ。四季に沿った食生活を提唱し、現在、代々木公園スタジオにて料理教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演、著作活動、講演会のほか、企業向けのレシピ開発、コンサルタントとしても活躍。美味しい食で人々の健康を支えている。

Instagram @panwei0531

02 Dan TSUKAMOTO

\ 初登場!/
踊る芸術。魅せる身体。
世界が喝采するバレエダンサー

柄本弾

兄と姉の背中を追いかけて
始めたはずの習いごとが自分の夢に

バレエを始めたのは5歳の時。兄と姉が通っていたバレエ教室のお迎えに母と行くうちに、「やりたい」というよりも、彼らと同じことがしたくなったんですね。アウトドア志向の父の影響もあり、少年野球や水泳、バスケットボールなど、ほかのスポーツにも熱中していて、バレエ教室に通っていたのは週に一度だけ。

それでも、小学校の卒業文集には"バレエダンサーになりたい"と書いていました。そんな夢が具体的になってきたのは、高校に入り、バレエ一筋に打ち込み始めてから。プロになりたい、バレエ団に所属したいと。その理由は、バレエだけが思うようにうまくできなかったからかもしれません。

大人になってバレエ団に所属するという夢は叶ったけれど、その次には主役を踊りたい、プリンシパルになりたい、とキリがなく広がりました。おそらく現役を引退するまで、夢が叶ったという達成感を持つことはないのかもしれませんね。でも厳しいレッスンを乗り越えた後に、舞台でいただく喝采とブラボーの声援。その幸福感が病みつきになり、夢はまた繋がっていくのだと思います。

Dan TSUKAMOTO

京都府出身。2008年、東京バレエ団に入団。2013年よりプリンシパルを務める。『ボレロ』を踊ることが許されているただひとりの現役日本人男性ダンサー。第75回芸術選奨舞踊部門にて文部科学大臣賞を受賞。古典からベジャール作品やフォーサイス作品などの現代的なものまで、幅広いレパートリーを持つ。

Instagram @dan_tsukamoto

03 Kazuko HAYASAKA

美と健康と幸福を探求し、
森暮らしを実践する植物療法士

早坂香須子

小学生の頃の夢は獣医。
何かを癒すことで癒される、
優しさの循環に憧れていたのかも

卒業文集に書いた夢は獣医。猫が診察台で注射を打っている、漫画みたいなイラストを描いていました。最初の職業が看護師だったのも何かを癒すことがやりたかった、そんな夢の延長だったのでしょうか。

今、森で暮らす中、"木の骨折"(笑)を治すようなことをしていると、幼い頃の思いは繋がっているのかなと。森をよく知るプロから、庭のカラ松の皆伐を勧められた時、木を切る罪悪感で踏ん切りがつかなかったことがありました。けれど、切らないことで植物の生長が止まってしまったり、痩せたカラ松が倒れたりする様子を目の当たりにして、森には森の循環があることを知りました。

幼い頃、北欧の大地を司る妖精・ノームの生態を解説した本に夢中になり、その存在を本気で信じていました。"ノームはいない"と知った今ですが、目に見えない力であらゆるものは循環しているのだと、森に教えてもらいました。皮一枚で繋がっていた木が、ほんの少し手当てをしただけでまた息を吹き返す。そんな姿を見て安らぎを覚えます。癒すことは癒されること。優しさは循環するんですね。

Kazuko HAYASAKA

メイクアップアーティスト、植物療法士。長野県にある森林との出会いから、森の再生をしながら自然の中で生きることを選ぶ。同時にKAZTERRAMORI名義で作家活動を開始。2024年10月には、文筆家・服部みれい氏と共著である詩画集「わたしの中にも朝焼けはある」(河出書房新社)を上梓。

Instagram @kazukovalentine

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さまざまな分野で活躍する目利きたちによるコラム【目利きが選ぶアレやコレ】。今回は目利きたちの“子どもの頃の夢”をご紹介。