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「目利きが選ぶアレやコレ」特別スピンオフ!
スパ&ホテルのスーパー旅ブロガー、Cielさんがナビゲート
ゆっくりと動き出した人の波。そろそろ本格的な旅支度を計画している方も多いだろう。やっぱり旅は楽しい。だからこそ格別な旅に出かけよう。旅ブロガーCielさんがナビゲートする、今だからこその旅のススメ。
Ciel
livedoor 公式ブロガー。「月に一度の世界スパ&ホテル巡り」では、世界のラグジュアリーホテルの滞在記と台湾の日常生活を綴る。Livedoor Blog of the year 2015 グランプリ受賞。KADOKAWAより同名の著書を出版。
Instagram @cieltrip
大海原を一望できる『伊豆リゾート&スパ』のテラスから。
コロナ禍の忍耐の時期を経たからこそ、旅の気運が盛り上がっている昨今。これまで以上の“旅情”を模索したくなる心境ではないだろうか。ありきたりではつまらない、かと言って冒険をしすぎるのもまだ時期尚早。そこで今回は、スーパー旅ブロガーで、会員誌『シグネチャー』の連載コラム「目利きが選ぶアレやコレ」でその目利き力を披露してくれたCielさんに、彼女ならではのオススメの旅へとナビゲートいただこう。
Cielさんが提案するのは、“脱日常”が存分に味わえる滞在型の旅だ。「海外渡航の困難な時期が続いて国内の旅が見直されている中、新規オープンの宿が気になりますね。特にラグジュアリー系では、小規模でプライバシーを重視した宿や大自然の中の絶景の宿など、日本を再発見できる場所ができています」。
滞在中、絶景を楽しみながら何度もつかりたくなる温泉。
そんな中、Cielさんを虜にしてしまったのが、2021年に開業した『伊豆ホテルリゾート&スパ』。名門・赤倉観光ホテル系列のリゾートで、広大な敷地にわずか26室という、まさに大人の空間。「まず、ロビーからの景観が、“ここはギリシャのサントリーニ島?”と思うぐらいの美しさなんです。別荘地の高台の一等地にあるこの宿では、部屋からも風呂からもレストランからも、とにかく眺めが素晴らしい!西棟と東棟をつなぐ“アクアブリッジ”と名づけられた橋の真ん中にはベンチがあって、まるで宙に浮いているような感覚になれます。“眺める”ための仕掛けが、そこここに整えられているんです。部屋に温泉がある場合、大浴場を利用することは稀かもしれません。けれど、ここの大浴場は深湯になっていて、湯船の中に立って海を眺めることができるんです。また、「リゾートルーム」と呼ばれるリビングのようなスペースでは、アルコールやソフトドリンク、アペリティフが楽しめるだけでなく、少し隠れた場所にはテレワークができるブースもあり、たとえ仕事を持ち込んでも、同行者に気兼ねすることがありません」。
「食事のバリエーションも豊富で長期滞在でもけっして飽きることはない」とCielさん。
「わずか26室のゲストのために用意された夕食は4パターン。割烹、しゃぶしゃぶ、洋食、鉄板焼、そして足湯のあるベーカリーもあります。温泉というと一泊で行くことが多いと思うのですが、食事に飽きさせない配慮があるここは、2泊、3泊と、滞在することをオススメしたいです。都心からなら、食事ができる列車や景色を楽しむための列車など、到着までの移動手段にも旅感満載。選択肢がたくさんあるのもいいですね」
地中海に浮かぶマルタ島。英語が公用語のため、語学留学先としても最近人気となっている。
「海外の場合、まだまだクリアしておきたい課題はいくつかあります。清潔で安全であることは死守しつつ、円安の窮屈さはできれば回避したい。そこで今一番にオススメしたいのが、マルタ島です。旅は遠くに移動するほど“旅感”が味わえるもの。けれど、パリやロンドンなどの都市では、どこか緊張感を手放しきれないと思うんです。どんなに旅慣れた人でも、数年のブランクの後には忘れている感覚というものがあるはず……。その点、マルタ島は1年の8割が晴れといわれる温暖な気候と日本と同等レベルの治安の良さ、そして実は物価が安い。そういう意味で、コロナ後の“リハビリ旅”にぴったりです。ヨーロッパの旅で一番に浮かんでくるデスティネーションではないけれど、すべての条件をそつなく満たした穴場かもしれません」
『ザ・シャーラパレス』があるイムディーナの街並み。陽に照らされると、城壁はハチミツ色に。
中世の時代にタイムスリップしたかのような気分が味わえる。
Cielさんオススメのホテルは、かつての首都であった街・イムディーナにある『ザ・シャーラパレス』。「人口300人ほどの、まるで迷路のような城塞の街。海沿いより人が少ないため、ふと小道に入り込むと自分だけが中世の街にタイムスリップした気分になれます。城壁の中にあるホテルはここ一軒のみで、夜になると観光客もいなくなる。まるで住人のような感覚で滞在することができるんです」。
名物のマデイラワインを求めて、店から店へ。
さらにディープな“特別感”を求めるならば、狙い目はポルトガルのマデイラ島なのだとか。「ポルトガルも治安が良くて物価が安い国。夏はヨーロッパ中から観光客が押し寄せる人気の観光地なのですが、あえてオフシーズンの冬に行ってみると、島の日常の顔が見えて面白いんです。年齢層が高いこともあってか、すべてがスローモーション(笑)。そんなほっこりしたリズムの中で、日本の3分の1程度の値段で楽しめるマデイラワインを求めて店をハシゴしながら堪能してみる。コンビニのような店にさえ、年代モノのワインが置いてあったり……ワイン好きにはたまらない場所といえますね」。
『ベルモント リーズパレス』はマデイラ島を代表する老舗ホテル。建物のピンク色とプールのブルーとの対比が美しい。
そしてマデイラ島でのオススメホテルは、『ベルモント リーズパレス』。フンシャル湾の景色を一望にする、歴史あるホテルだ。
「158室ほどの古い建物で、その時代だからこその“余白”があるんです。こんなところにベンチがあるの?とか、そんなところに装飾だけのスペースを設けてしまうの?など(笑)。居心地の良さとは、不合理なところにこそ生まれることを教えてくれます。また、景色を期待して行ったわけではなかったのですが、街と海を一望する眺めは絶景でした。市内に出れば俯瞰で街を眺められるゴンドラがあり、島ならではの起伏がある景色にとても癒されます。また、美味しいイワシが食べられますし、日本の出汁に似た食のテイストも滞在型の旅には優しくて……。ポルトガルは、いつか行ってみたい国の“常連”でありながら、優先順位の上位に入ってこないかもしれません。けれど、のんびりヨーロッパの雰囲気を味わうにはとてもいい国。“リハビリ旅”にも最適とも言えるでしょう」
優雅なベッドが設えられた落ち着きのある客室。
人気のデスティネーションをちょっと外して、暮らすように滞在する。安心を確保しながら少しだけ未知の扉を開けてみる。新鮮な気分で出かける旅は、Cielさんが言うように、これまでとは違った角度で人生を彩ってくれるかもしれない。
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