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目利きが選ぶアレやコレ
第33回:思わず散財してしまうもの

イラストレーション・naohiga

「金銭感覚」とは不思議なものである。野菜の数十円の差に"高さ"を感じるのに、数十万円のバッグを"お値打ち"と思ってみたり……。つまり、数字そのものではなく、"納得する気持ち"なのだ。目利きたちがつい散財してしまうもの。それは各人の一番大事な価値観を表しているようだ

01 Tae ASHIDA

\ 初登場!/
エレガンスに革新をもたらす
ファッションデザイナー

芦田多恵

幼い頃から親しんできた香り。
"今"を感じる香りについつい素通りできなくなる

香水売り場の前を通ると、つい足が止まってしまいます。気になったものを試香紙につけてはクンクン(笑)。香水は気分を盛り上げてくれたり、解放してくれるものだったり……私を前向きにしてくれる起爆剤です。

また、「この香りはあの方を元気づけてくれそう」とか「あの人と同じ年生まれの香水だから」など、お世話になっている方へのギフトとしても。好きな香りがたくさんある中、コレクション発表の日にだけつけると決めている香水があります。

それがパリで最も古い香水のメゾン"キャロン"の「エメクモア」。フランス語で"私だけを愛して"という意味の名前が、今シーズンのクリエーションが受け入れられるのか、不安に駆られる私を勇気づけてくれるのです。自分の今の心のありようがわかる物差しがいくつかあるとするならば、香りは確実にその中の一つ。新しい何かに出合えそうで、クンクンだけは止められないのです。

Tae ASHIDA

東洋英和女学院小学部・中学部、スイスのル・ローゼイ高校を卒業後、アメリカのロードアイランド造形大学アパレルデザイン科を卒業。同校にて芸術学士号を取得。1991年にコレクションデビュー。「ジュン アシダ」のクリエイティブディレクター、「タエ アシダ」のデザイナーを務める。令和6年度文化庁長官特別表彰を受賞。

Instagram @taeashida

02 PANWEI

魔法のレシピで美と健康を叶える
料理研究家

パン・ウェイ

歴史に磨かれて魅力を放つ骨董品。
その来し方を想像してはニヤニヤしてしまう

私が生まれ育ったのは北京の街中。お茶の時間になると、近所のおじさんやおばさんが集っては骨董品の自慢話に花を咲かせていました。子どものくせにそんな話を聞くのが大好きで、いつの間にか偽物との見分け方まで身についてしまったよう(笑)。

以来、気に入った骨董品を見ると、ついつい買いたい衝動に駆られてしまうんです。どんな人にどんな風に使われていたのかを想像するだけでニヤニヤと。もう現代では再現できなくなった技術や、歴史を経たからこその風合いなど、骨董品にはそれぞれに物語がある……そこに惹かれるんでしょうね。

時代に埋もれていた品物にもう一度活躍してほしいので、購入するのはすべて実際に使える食器ばかり。9枚の皿がお盆に収められたセットは、華やかな茶会の主役としてお出しします。あまり散財をするほうではないのだけれど、想像の翼を広げてくれる骨董品だけは、止めることができない人生の楽しみになっているんです。

PANWEI

中国・北京生まれ。四季に沿った食生活を提唱し、現在、代々木公園スタジオにて料理教室を主宰。「きょうの料理」(NHK)等のテレビ出演、著作活動、講演会のほか、企業向けのレシピ開発、コンサルタントとしても活躍。美味しい食で人々の健康を支えている。

Instagram @panwei0531

03 Dan TSUKAMOTO

踊る芸術。魅せる身体。
世界が喝采するバレエダンサー

柄本弾

買い物は年に数回だけ。
長く使えるという視点での"良い物買い"が基本

買い物に出かけるのはせいぜい年に数回程度。出かけたとしても、途中で飽きて帰りたくなるほどの"買い物不精"です(笑)。基本的にほしいものは"良いグレードの物"を選ぶようにしているけれど、その理由も買い直すぐらいなら最初から良い物を、というスタンスだからなんです。

バレエシューズや練習着などは、「コレ!」と思った同じ物を廃盤になるまで買い続ける。さらに、流行にはまったく乗らず、衣類はもっぱら"補充"が目的のアウトレット族。コロナ禍で購入した車もほしかったからではなく、公演に支障が出ないよう、ソーシャルディスタンスを保つため。

僕の買い物スタイルは、散財とは対極にあるようなものですね。こだわりが一つあるとするならば、「必要には最適を」。それに徹しているので、買って後悔したというストレスがないんです。これが自分にとっての"散財の形"なんだと思います。

Dan TSUKAMOTO

京都府出身。2008年、東京バレエ団に入団。13年よりプリンシパルを務める。『ボレロ』を踊ることが許されているただ一人の現役日本人男性ダンサー。第75回芸術選奨舞踊部門にて文部科学大臣賞を受賞。2025年11月24日(月)、東京文化会館で上演される『ドン・キホーテ』に、バジル役で出演予定。

Instagram @dan_tsukamoto

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さまざまな分野で活躍する目利きたちによるコラム【目利きが選ぶアレやコレ】。今回は目利きたちの“思わず散財してしまうもの”をご紹介。