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目利きが選ぶアレやコレ
第7回：人生最高のお買い物

イラストレーション・naohiga

Illustrations by naohiga

“人生最高の”という冠がついた途端、お買い物は特別な意味を持つ。買った人の中だけに展開するストーリー。モノから見えてくる人生の価値観。達人たちのストーリーに見えてくる“人生最高のお買い物”をご紹介。

01 Ciel

02 Nakayaman

03 Mikiko HAYANO

01 Ciel

スパ＆ホテルの
スーパー旅ブロガー
Ciel

初めて出かけた究極のリゾート。
“体験こそが買い物”と知った旅

一人旅をしていると、飾らなくていいから他人の持ち物が羨ましくなることもないし、スパを目指して行く旅では、文字どおりの“裸一貫”で事足りてしまう（笑）。物欲が抜け落ちてしまった私にとって、最高の買い物とは、2013年に初めて一人で行った『ギリランカンフシ・モルディブ』での滞在。

“ノーニュース、ノーシューズ”がホテルのポリシーで、ヴィラにはボートでしか行けないというノイズが完全にシャットアウトされるリゾートスタイルは、究極の憧れでもありました。けれど、リゾートというのはロマンティックな気分で大切な人と行くもの。今まで一人で滞在したのは4人だけ、しかも女性は私だけだとスタッフから聞きました。

チェックインしてしまうと、いい意味で“逃げ場がない”という葛藤を退け、思い切って飛び込んだ初めての体験は、その後の私の行動力を高めてくれた転機の旅だったのです。

Ciel

livedoor公式ブロガー。「月に一度のスパ＆ホテル巡り」では、世界のラグジュアリーホテルの滞在記と台湾の日常生活を綴る。Livedoor Blog of the year 2015 グランプリ受賞。KADOKAWAより同名の著書を出版。

Instagram：@cieltrip

02 Nakayaman

マーケティングスペシャリスト
そして現代アーティスト
ナカヤマン。

ステイホームで充実。
美味しく炊ける白米が楽しみに

人生に大きな影響を与えてくれたという意味では、“世界一周旅行をする習慣”は、一番の買い物ですね。コロナ禍になる前までの6年間、毎年ANAの周遊チケットを買って旅していました。3ヵ月くらいあちこちを彷徨うと、過剰な所属意識や執着がなくなり、フラットになれます。

逆にステイホームの間、調理器具をたくさん揃えたのもライフスタイルを刷新した買い物。コロナ以前、家は帰って寝るだけの空間だったけど、外食もできないから自炊してみようかと。

「バーミキュラ」の炊飯器で美味しいご飯を炊く。京都の老舗割烹『浜作』の料理教室で習いっぱなしだった本格的な和食を実際つくってみる……「有次」の銅鍋で出汁を取る時間は無心になれて、一番いい時間かもしれません。

ナカヤマン。

京都とロサンゼルスを拠点とする現代アーティスト。2022年2月にはFrieze LosAngelesの公式プログラムに招致され作品を披露した。そのかたわらでシャネルやルイ・ヴィトンなどのファッションブランドや、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のストラテジストとしても活動する。

Instagram：@nkymn

03 Mikiko HAYANO

世界のセレブが指名する美容家
早野實希子

父と最後に食べた『鮨青木』のおせち。
人生で初めて買った、最高の買い物

父が余命宣告を受けた2019年のお正月。その年は、『鮨青木』のおせち「祝」を携えて年末から帰郷し、父のマッサージをするという日々を過ごしました。そうすると少し食べてくれて……。1月19日に他界したのですが、一人暮らしだった私が初めて買ったおせちは、父が「美味しい」と言ってくれた思い出と共に、人生最高の買い物になりました。

もう一つが私のサロンに鎮座する「Cattelan Italia」の八角形の鏡。あまりの巨大さにロンドンの『ハロッズ』で何度も下見をし、模造紙で原寸大の型紙をつくって合わせてみたり。ようやく買おうと決心した途端にコロナでロックダウンになってしまい、船便で東京に到着するまでに半年！

さらに大きすぎてクレーンで引き上げ、サッシを外して運び入れる大作業に。そんな苦労の末にやってきた鏡はサロンの顔となってくれました。時間と手間がかかりましたが、色々な意味で思い出深い買い物でした。