Special

「目利きが選ぶアレやコレ」
特別スピンオフ:

長谷川京子の欠かせないファッションアイテム

~自分を愛せる服を作りたい~

文・小野ゆかり

ファッションアイコンとなって見失った自分

「ハセキョー」という呼び名が全国的になるほど注目のデビューを飾った長谷川京子さん。

現在でもファッションアイコンとして、2児の母として、生き方を発信し続けている。

果たして“ファッションアイコン”とは何なのだろうか? 長谷川京子という人は、そんな定義を改めて考えさせてくれる存在の一人だ。「ハセキョー」がブームとなったのは17歳の時。いわゆる“赤文字系ファッション雑誌”の専属モデルとなり、その存在感から“ハセキョーブーム”を巻き起こした。ファッションモデルがアイコンとして認識されるのはけっして珍しいことではないが、彼女が“ファッションアイコン”として認知され始めたのは、実はその後のことである。モデルとしてのブームが一段落ついた頃、こんなことを語っていたことがあった。

「あの頃、急に環境が変わり始めて、何を信じていいのか、自分は何なのかがわからなくなっていたかもしれません」。そんな彼女にとって“装うこと”、つまり“ファッション”は、“確かな自分”を取り戻すための、自己表現の一つになった。そしてその思いは、やがてモノ作りにまで発展し、2021年、自身の下着ブランド「ESS BY」のECサイトをオープンした。

「自分の中に、モノ作りのコンセプトが明確にあったんですよ。テーマは“自愛”。自分が自分を愛するために、そのサポートになるものが作りたかったのです。最初に下着を手掛けたのは、一番に身につける“服”だったから。肌に直接触れる布が心地良かったら、服を重ねるよりもずっと内側から湧き出る自信になるだろうと……。技術が進歩したこの時代、安価で機能性に優れた下着は簡単に手に入るんですよね。コロナ禍には私もそんな下着に頼っていたこともありました。けれど、ある人に言われたんです。「楽な下着ばかり着けていたら、楽な女になっちゃうよ」と。それがちょっとした衝撃で。もちろん、楽なほうがいい時もある。けれど、ずっと楽なままでいたら、それは私が素敵だと思える女性像とは違っていたんです。ちゃんとメリハリを持つことが大切なんじゃないか、と。女であることを愉しめる土台を作りたい、自分が素敵な存在だと思える1日を過ごせるようなものが作りたい。それが、ブランドを発足するモチベーションになったんです」と長谷川さん。結果、「ESS BY」が展開する下着は、なめらかな肌触りを実現しながら3Dストレッチ素材などで体型もサポートする商品になった。

自分を知って、自分を愛する

「下着は、最初に身につける服であると同時に、その次に着る服の土台にもなる部分。だから、胸が逃げないようにサポートする。自然に美しく寄っているバストライン、締めつけることなく後ろ姿を整えるヒップラインを形成するなど、身につけることで優雅な気分になれる着心地を実現する。私が理想とするそんなことを、日々、模索し続けていました」

ブランド発足4年目を迎えた昨年、長谷川さんはファッションの領域にも挑戦することを決めた。「昨年末のコレクションでは、下着の延長線上でスキントップスを作りました。スキントップスは、元々スポーツ系の機能性衣料として作られていて、私もワークアウトの時などに愛用していました。その快適さにファッション性も両立させてみたくなったのです。イメージとしては下着と服の架け橋のようなもの。部屋着としても快適ですが、ジャケットを一枚羽織ったら、そのまま外へも行けるもの。私が着たいものを作った結果ではあったのですが。ざっくりとしたセーターの襟元から少し覗いていたらそれだけでサマになるし、それ一枚にデニムを合わせるだけでもスタイルが完成します。これが日常でも旅でも、今の私のコーディネートに欠かせないアイテムになっているんです。軽いしシワにならないし、扱いも楽だし。着始めたら、その汎用性を再認識するようになりました」。

けれどピッタリした服は、どうしても体の線が出てしまうイメージがある。スタイルがいい人ならばいいのだけど……そんな声もよくフィードバックされたという。「そんな反応も予想はしていました。けれど、自分の体のラインを知ることは、“自分を知って、自分を愛する”最初の一歩なのかな、と思うんですよ。どんな体型でも胸や肩などの曲線は女性の魅力の一つだし、それを知れば活かすスタイルもできてくる。スキントップスってピッタリしているけれど、実は体型を補正する役目も担ってくれるんです。『思っていたよりいいかも?』と自分の体を好きになると、不思議に体も応えてくれるようになります。体にピッタリした服は、もしかしたら時代の逆を行っているのかもしれません。けれど、私が作りたかったのは自分を愛する“自愛”の服。その初心に照らし合わせてみたから、自信を持って愛せるものを作れたのかなと思うんです」。

容姿端麗で華々しいデビューを飾り、さらには自分のブランド設立という次なるステージにもたどり着いた。「ハセキョー」の軌跡は、人が羨むようなものかもしれない。けれど、長谷川さんは言う。

「ありのままの自分でいるって、それほど簡単なことではないと思うんです。だからこそ目を背けずに、ありのままでいられる、その一助となるものが作りたい。個性って枠からはみ出しているほど生きにくくなったりするじゃないですか? けれど、その個性をまずは自分が認めてあげなくては……。それは、私自身にも言い続けていることなんですね。自分を愛する自愛の服。そんな服が私にとって、欠かせないファッションアイテムなんです」

Kyoko HASEGAWA

千葉県出身。『CanCam』の専属モデルとして活躍し、"ハセキョー"の愛称で人気を博す。2000年、ドラマ「らぶ・ちゃっと」で女優デビュー。2021年に下着ブランド「ESS by」(エス バイ)を立ち上げ、昨年のコレクションでは服・インテリアへの展開もスタート。ブランドコンセプトは「自愛」で、肌に触れるものだからこそ心地よく、自分を愛せるような下着を提案している。

Instagram @kyoko.hasegawa.722

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さまざまな分野で活躍する目利きたちによるコラム【目利きが選ぶアレやコレ】。今回は特別スピンオフ:長谷川京子の欠かせないファッションアイテム ~自分を愛せる服を作りたい~ をご紹介。