インタビュー

秋から春へ。三重の絶景

三重県を撮り続ける写真家
多田良平さんと巡る

写真・多田良平
文・関屋淳子

南北に長い三重県は海、山、川に恵まれる風光明媚な地。
史跡も多く、地域ごとに独特の文化がある。
県の魅力を発信する写真家・多田良平さんに秋から春に訪ねたいスポットを聞いた。

秋 荷担滝の紅葉
赤目四十八滝のうち、不動滝や千手滝など赤目五瀑と呼ばれる見どころのひとつで渓谷入口から徒歩70分ほどにある。落差8メートルだが奥行きがあり、渓谷随一といわれる。遊歩道の高台から撮影。住所:名張市赤目町長坂861-1

ハンドルネーム「ふがまるちゃん」としても活躍する三重県在住の写真家、多田良平さん。2016年、実家の津市に戻り、三重県観光連盟のウェブサイトなどで県内の絶景やグルメなどを紹介し、三重の風景写真集も刊行。三重に精通する多田さんが秋の絶景スポットとして挙げたのが県西部、名張市にある「赤目四十八滝」である。
赤目四十八滝は、滝川沿いを流れる滝の総称で、ハイキングコースを辿りながら23瀑もの滝を見ることができる。またここは古来、山岳信仰の聖地で、奈良時代には修験道の開祖・役行者の修行場でもあった。約4キロにわたる渓谷の中でも「荷担滝(にないだき)」はぜひ見てほしいと多田さんは話す。
「70分ほど歩いたところにあり、岩を挟んで2つの滝が流れています。ここまで歩いた疲れを忘れるほどの絶景です。この写真は11月中旬の紅葉の終わりかけに撮影したものです。岩場に張り付く落葉など、様々な色のグラデーションを切り取りました」

冬の伊勢神宮

天照大御神を祀る伊勢神宮内宮。冬至を中心に、11月下旬~1月下旬の7時30分頃に宇治橋中央付近から日が昇る。狙い目は冬至の前後1週間の平日で、前日に近くに宿泊するとよい。住所:伊勢市宇治館町1

冬のおすすめは歴史名所と氷の造形美を堪能できる2か所。誰もが一度は訪ねたいと願う「伊勢神宮」、その内宮の宇治橋と大鳥居から昇る日の出である。冬至(2024年は12月21日)の前後1か月に橋の中心あたりから日が昇る。「今では有名になり、多くの人が早朝から行列をつくってご来光を待ちます。太陽が昇ると、神々しさとともに暖かい空気に包まれ、ほっと心が満たされます。1年間頑張ってきた自分へのご褒美のように感じます」

冬の御在所

鈴鹿山脈の主峰である標高1212メートルの御在所岳。9合目までロープウエイで約12分の空中散歩が楽しめる。第2そりゲレンデには天空の氷瀑が造られる。山上は雪道なので足元注意。住所:三重郡菰野町湯の山温泉

もう1か所は鈴鹿山脈のほぼ中央に位置する「御在所岳」である。県内唯一のスキー場があり、ロープウエイで気軽に登山が楽しめる。樹木を銀色に飾る樹氷とともに、御在所岳の冬の風物詩になっているのが「天空の氷瀑」。氷点下の日に、水を霧状にして吹き付け、氷の塊を造っていく。最終的には高さ10メートルほどになるという。
「御在所ロープウエイの公式サイトのライブカメラやSNSで氷瀑の様子や天気、ゴンドラからの眺めなどがわかりますので、それを見て、よし、今日行くぞと出かけます。ぜひ食べていただきたいのがレストラン名物の『御在所カレーうどん』。麺はもちもちの伊勢うどんで、冷えた体を温めてくれます。スキーをしなくても冬山を手軽に体験できる名所ですね」
秋や冬でなければ体験できない三重の自然の魅力。多田さんの写真からは豊かな色彩と迫力が伝わってくる。

冬の伊勢志摩スカイライン

朝熊山頂展望台から眺める伊勢平野の夜景。「三重は車で旅するのがおすすめ」という多田さんの言葉どおりの光景だ。

冬から春 ともやま公園

ビジターセンターやキャンプ場などがある公園で、桐垣展望台から英虞湾や小島、真珠養殖の筏などが一望。2019年ウッドデッキが新設された。日没後のマジックアワーも写真に収めてみたい。住所:志摩市大王町波切2199

志摩市にある「ともやま公園」は、三方をリアス式海岸の英虞(あご)湾に囲まれている。園内の桐垣展望台は1年を通して英虞湾に沈む夕日が楽しめるスポット。多田さんのおすすめの時期は冬から春。その理由について次のように話す。
「桐垣展望台へは車で容易に行くことができ、駐車場の目の前に海が開け、車内からでも英虞湾の夕日を眺めることができます。まだ寒さが残る時期でも、車から楽しめるというのがポイント高いですね。冬は星空も綺麗ですから、デートコースの最後に立ち寄ってみるのもいいでしょう」
英虞湾を見晴らす展望台はほかにもあるが、この展望台ほど海に近いところはないという。夕方から日没、さらに夕焼けと、刻々と変化する海と空を楽しみたい。

冬から春へ 賢島エスパーニャクルーズ

リアス式海岸の英虞湾を周遊できる約50分の遊覧船ツアー。真珠養殖工場に寄って真珠の核入れ作業も見学できる。

春のいなべ市農業公園

38ヘクタールの梅林公園エリアとボタン園やパークゴルフ場、レストランなどがあるエコ福祉広場エリアからなる。毎年2月中旬~3月中旬、梅の開花に合わせて梅まつりが開催。住所:いなべ市藤原町鼎717

三重県の春は梅の便りで始まる。2月中旬ともなると、県内各地の梅の名所が見頃を迎え、芳しい香りに包まれる。名所のひとつである「いなべ市農業公園」は、100種類、約4000本の梅がある東海地方最大級の梅園で、桃源郷のような景観が広がる。
「いなべ市は県の最北端にあり、愛知、岐阜、滋賀に近いため、周辺の観光客で賑わいます。見晴台からはパッチワークのような絶景を堪能できますし、背後にそびえる鈴鹿山脈の残雪をバックに撮影することもできます。春が来たなあと実感する風景ですね」

春の鈴鹿の森庭園

日本の伝統園芸文化のひとつ、しだれ梅の仕立て技術を堪能できる。日本最古の「呉服しだれ」をはじめ、梅の名木が200本ほどあり、毎年開花期に合わせて一般公開されている。見頃は3月上旬。住所:鈴鹿市山本町151-2

もうひとつの名所が「鈴鹿の森庭園」である。しだれ梅の仕立て技術の存続と普及を図り、樹齢100年を超える名木もある。多田さんの鑑賞法は15時頃に入園し、日中の梅と幻想的なライトアップの両方を楽しむことだそう。
梅の便りのあとは桜である。「日本さくら名所100選」に選ばれているのが、伊勢市の宮川堤で、「一目千本」と呼ばれる桜並木が続く。花見時には大勢の花見客であふれるが、多田さんの写真には人の気配がない。
「実はこれは雨の日に、水たまりの鏡面反射で撮影したリフレクション写真なんです」
道の水たまりまで視点を下げて撮影した構図で、風がないため水たまりの水面に映る桜が浮き出ているようだ。ユニークな撮影方法で、有名な名所に新たな魅力をプラスしている。最後に多田さんに三重旅のコツを聞いた。
「ぜひ車で巡ってほしいですね。無料駐車場が多く、車を降りたらすぐに絶景という場所が多いのが三重です。ドライブ旅を楽しんでください」

春の宮川堤

宮川の河川敷約1キロにわたり桜並木が続く。江戸時代から「桜の渡し」として知られ、明治になると古木の保存と補植が進められた。染井吉野や山桜など約700本があり、3月末が見頃。住所:伊勢市中島町1丁目、宮川2丁目

春 安乗埼灯台からの眺め

日本で16しかない登れる灯台が志摩市内には2つある。新緑が美しい春には、島々と海が一層青く輝く。


多田さんプロフィール

多田良平
ただ りょうへい/三重県津市出身・在住の写真家。2016年から三重県を撮る写真家として活動し、SNS総フォロワー数12万人以上。写真と動画を通じ、三重県の魅力をインスタグラムで発信し、個人で県内の観光誘致に取り組む。
https://www.instagram.com/mie_eetoko/


Information

三重県の公式観光サイト「観光三重」は、三重県の豊かな自然、深い歴史文化、そしてグルメから多彩な観光スポットまで三重県の魅力を余すところなく紹介。季節ごとのイベント情報など、何度見ても新しい発見がある観光サイトとなっている。

三重県公式観光サイト「観光三重」はこちらから。
https://www.kankomie.or.jp/


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三重県を撮る写真家として活動する多田良平さんへのインタビューをご紹介。