インタビュー
写真・栗林成城(人物) 文・小倉理加
Photographs by Shigeki KURIBAYASHI
Text by Rica OGURA
ジュエリーブランド「エネイ」の生みの親である『松屋銀座』スタートアップ事業課課長の島田成一郎氏。
大振りな喜平チェーンにメレダイヤをセッティング。「喜平 メレダイヤモンド トリプルピアス」シルバー、63,800円(税込)
“ラボグロウンダイヤモンド”とは、人の手でつくり出した合成ダイヤモンドのこと。「エネイ」は、この素材をスタイリッシュに活かしている点が特徴だ。老舗百貨店『松屋銀座』で、最初にラボグロウンダイヤモンドに目をつけたのは、スタートアップ事業課課長の島田成一郎氏。コロナ禍で休業していた先の見えない不安な時期に、何とか百貨店を元気にする起爆剤はないかと、このラボグロウンダイヤモンドを軸としたジュエリーブランドのアイデアを思いついた。
「自分たちで発信して、ファンになってもらえる目玉商品をつくる必要があると痛感していました。ここ数年、SDGsにフォーカスが当たるにつれて、消費者の価値観が変わってきたことも感じていたので、ラボグロウンダイヤモンドのようなエシカルな素材は新規顧客層を獲得するきっかけにもなると感じたんです」と島田氏は語る。そのほかにも、ジュエリーボックスにリサイクル可能なスチール缶を採用する配慮も忘れなかった。
「エネイをプラットフォームに、世の中に貢献するのが夢」と語る島田氏。
新規顧客のターゲットとして島田氏が想定していたのは、ジュエリーをファッションの一部として捉えてくれる層。百貨店は高級で敷居が高いと思っている若者たちにも響くものをという点にこだわった。
「松屋銀座という色は最後まで出しませんでした。告知もSNSを効果的に使い、ブランディングディレクターもファッション業界で実績を積んだフリーランスの田上陽子さんを起用しました」
島田氏と田上氏は、まず周囲にジュエリーに対して何を求めているかをヒアリングして回った。「元気をもらえる」「リセットできる」など、答えは十人十色。島田氏は言う。「あえて決めつけるべきではないと思いました。いろいろな人が自分らしい表現のできるブランドにしたいと目標が定まりました」。
また、田上氏はこう加えた。「ラボグロウンダイヤモンドは、何億年もかけて地中で育った天然ダイヤモンドと違い、生まれたてのフラットな石だと感じました。ある意味、無垢な石。そのゼロベースの石に、自分の思いや目標を込めて頑張れるような存在のジュエリーをつくりたいと思ったのです」。
合成といっても、天然ダイヤモンドと同じ成分・組成。なかでも、「エネイ」は品質の高いものを厳選して使用している(0.5ct以上のラボグロウンダイヤモンドには鑑定書付き)。「ベゼルピアス」Pt×ラボグロウンダイヤモンド両耳で約0.6ct、231,000円。
「ハーフムーンリング」18KYG×ラボグロウンダイヤモンド約0.2ct、121,000円(共に税込)
多くのプロのスタイリストが好意的なコメントを寄せるデザイン性の高さも、エネイの魅力である。
「自分のスタイルを大切にして、ファッションを楽しみたい方。洗練されたものを好む方を想定して、“ユニークシック”をデザインコンセプトにしています。これまでダイヤモンドに馴染みがなかった人たちにはデイリーで愛用できるもの。一方、これまでダイヤモンドジュエリーのユーザーだった方には、新しい提案ができるようにデザインの幅を広く設けているのも特徴です」と田上氏。
実際、ほかにはないユニークなデザインは、海外からの反響も多い。たとえば、「ハーフムーンリング」は、神秘的な月の満ち欠けを表すためにラボグロウンダイヤモンドならではの大胆なハーフムーンカットを採用。「ベゼルピアス」は、石枠の一部にスリットを入れることでサイドからの石の輝きが見える工夫をしている。一粒ダイヤモンドでも、人とは少し違う個性がほしい人に向けてデザインされているのだ。
ブランディングディレクターの田上陽子氏。「コンセプトからコレクションの方向性まで、すべてチームで話し合いながら決めます」。
「エネイ」というブランド名にも、一度聞いたら忘れられないユニークな響きがある。
「ENEYのブランド名はany+energyの造語で、いろんなエナジーの循環をイメージしています。私たちチームと職人が想いを込めてつくるジュエリー、そしてそれを使っていただくお客様が自分の想いをジュエリーに込めて育てていく。さらに地球環境に対する意識や自然への敬意をENEYのジュエリーをきっかけに循環させて未来へ繋げていく、そんなイメージを描いています」と田上氏は言う。
さらに、目標は先にある。「まずは商品とともにその想いをお伝えしていくと同時に、将来的には商品を超えたサービスやコトを提供していければなと思っています。島田さんは集まる人にエネルギーを与えられるような“エネイパーク”をつくりたいと、よく話しています。そんな未来が待っていると思うと、楽しみでなりません」。
ボールチェーンの繊細な輝きが揺れる、一番人気の「ピクセルピアス」18KYG、40,700円。「ピクセル ラウンド ネックレス」18KYG×Pt×ラボグロウンダイヤモンド約0.23ct、112,200円(共に税込)
太陽の神アポロンをモチーフにした「コインズチャーム」。10KYG×ラボグロウンダイヤモンド、74,800円、「コウマルチェーン」10KYG、24,200円(共に税込)
島田氏プロフィール
島田成一郎
Seiichiro SHIMADA
松屋銀座 スタートアップ事業課課長
2002年入社。銀座店1階シーズン雑貨のバイヤーをはじめ、さまざまなレディスファッションアイテムのMDを担当。2021年2月までは銀座店1階MD責任者を担当。「エネイ」を立ち上げる。
田上氏プロフィール
田上陽子
Yoko TAGAMI
ブランディングディレクター
オーガニック&ナチュラルビューティーブランド『F organics』『ObyF』『Celvoke』を立ち上げる。現在はフリーランスとしてディレクション、企画などの仕事を手掛ける。
Information
ダイナースクラブ会員対象の特別優待情報(2023年5月31日まで)があります。詳細は「シグネチャー」2023年4月号79ページをご覧ください。
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ジュエリーブランド「エネイ」の生みの親、『松屋銀座』スタートアップ事業課課長の島田成一郎氏へのインタビューをご紹介。