京都、路地のなじみ

人柄が繋ぐ縁と
家庭のぬくもりが
詰まった生パスタ

写真・武甕育子 文・山下崇徳(アリカ)

京都大学の学生が行き交う、百万遍。その賑やかな交差点から南西に向かって小道に入れば、一転して閑静な住宅街となる。うねるような細い道を進んでいくと、やや洋風の家屋の並ぶ一角が。路地の奥、ちらりと覗く小さな木の看板。そこがイタリア料理店『Cantina Rossi』の入り口だ。

店名の「カンティーナ」の意味は、オーナーシェフの中川浩さんが「泊まりたい」ほど好きな「ワイン蔵」で、「ロッシ」は名前の「浩」から。漆喰にレンガ、木材が配された店は、ワイン蔵をイメージして自身が設計したという。

中川さんは、もと建築士。その経歴もあって「素人料理」と謙遜するが、四半世紀の間、近隣の京大関係者をはじめ、地元のグルマンを魅了してきた。中でも人気の生パスタ料理は、実は二人の名シェフから直々に手ほどきを受けたものだ。

仕事柄、度々訪れていたイタリアで現地の人と友達になり、家に招かれてはごはんをご馳走になって、その食・住の文化に魅せられたという中川さん。1999年(平成11年)、39歳の時、思い切って建築の仕事を辞め、妻の美弥子さんと店を開いた。

「世の中何もかも機械化が進む時代でしたが、料理は最後まで手を使う仕事だと思って」。美弥子さんと共に通っていた縁で、京都・イタリアン界の先駆者『フクムラ』の福村賢一さんが応援してくれ、生パスタの手ほどきを受けることに。さらにソースは、石川を代表する名店『イル ガッビアーノ』の金山貴永さんが京都まで来て教えてくれた。金山さんとは、イタリアのシチリア島で知り合っていた。

「当時はそんな凄いシェフとは知らんかった」と笑う浩さん。「包丁の持ち方から教わるほどやったけど、二人が教えてくれた生パスタとソースやから、自信を持って出せたんです」。

店名を冠した名物「ロッシ風」は、ショートパスタ・リガトーニに、京都のシャルキュトリー『かわきた屋』のサルシッチャをはじめ生ハムやナッツ類を炒めて細かくしたものに生クリーム、チーズを加えたソースが絡まる一品だ。

もちもちとした生パスタに、芳醇な香りがまとう。風味豊かだけれど濃厚すぎず、毎日でも食べたくなる軽やかさは、毎年のように家族でイタリアを訪れ、地元の家庭で料理を味わい続けた舌が育んだものだ。

昼はランチセットが、夜はコースのほか各種アラカルトがスタンバイ。水牛のモッツァレラを使ったカプレーゼなどの前菜や、カツレツなどの肉料理も人気だ。夫妻お気に入りのイタリア各地のワインと家庭料理を思わせる味を堪能したい。

Cantina Rossi

京都市左京区吉田泉殿町57-1

電話:075-751-6422

営業時間:12:00 ~ 14:30、18:00 ~ 21:30

定休日:日曜、月・水・金曜のランチタイム
※ほか臨時休業あり

https://www.cantinarossi.com/

「ロッシ風」2,300円、「カプレーゼ」1,300円、
「ハウスワイン」700円(Glass)~(すべて税込)
※支払いは現金のみ

*掲載情報は2024年12月号掲載時点のものです。

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山下崇徳(アリカ)さんが綴るコラム【京都、路地のなじみ】。今回は「人柄が繋ぐ縁と家庭のぬくもりが詰まった生パスタ」。