京の朝食

季節のおばんざいと
つやつや土鍋ご飯
飾らない京の味

写真・木村有希　文・藤本りお（アリカ）

土鍋のふたを開けるとふわっと湯気が立ち上る。炊き立てのご飯に、西京漬けの焼き魚やおばんざいの小鉢が並ぶ姿はまさに、理想の和の朝定食。おばんざいは京都の家庭で作られてきた惣菜で、野菜を出汁で煮炊きしたものが多い。賀茂なすや万願寺唐辛子、九条ねぎといった京野菜もよく使われる。地元で親しまれる、そんな日常の味を朝から楽しめるのが『旬菜いまり』だ。

烏丸通から西へ入った六角通沿いに佇む築百年ほどの京町家。間口が狭く奥行きのある、いわゆる「うなぎの寝床」で、テーブル席やカウンター席が奥へと続く。京都の中心とされる「へそ石」がある六角堂（頂法寺）からも近い街なかにあり、夜はおばんざいを中心に和食と日本酒が味わえる。2013年の創業以来、観光客のみならず、辺りのオフィスで働く地元の人たちからも、仕事帰りに立ち寄る店として愛されてきた。

朝食の提供は2016年から。「旅の楽しみの一つは朝食ですよね。観光に来られた人が炊き立てのご飯で、朝から京都らしい和食が楽しめる場所になればと始めました」と語るのは、店主の森宏午さん。来店時間に合わせ30分かけて土鍋ご飯を炊き上げるため、朝食は予約制。7時半から10時まで30分刻みのスタートで、1日30組・60食限定だ。

献立の中心となるのが、この土鍋ご飯。京の老舗米問屋「八代目儀兵衛」から仕入れる京丹後産コシヒカリは、小粒で艶があり瑞々しい。一人前で茶碗に軽く3杯ほどあるが、多彩なおかずと合わせながら完食する人がほとんどだとか。

夜にも提供されるおばんざいメニューから小鉢を2品、店で漬ける鮭などのほんのり甘い西京焼き、旨みたっぷりの出汁巻き玉子といった品々を、朝から存分に堪能できる。この日のおばんざいは季節替わりの品で「南京鶏そぼろ煮」と「万願寺唐辛子とじゃこの炊いたん」。ちなみに「炊いたん」とは、関西の言葉で「炊いたもの」の意味で、おばんざいの名前によく登場する。

乾物店から毎日削り立てが届く鰹節と利尻昆布から引く一番出汁がふくよかに香る料理。その滋味が、じんわりと体に染みわたっていく。ご飯のお供となる昆布の佃煮や鰹節のふりかけ、すっきりとした酸味の糠漬けなども、手作りの温もりを感じる自家製だ。

器は、森さんがカラフルな色合いが好きで取り入れているという伊万里焼が中心で、店名もそこから。料理に華を添える色とりどりの器も愛でながら、朝一番、旅の活力をチャージしたい。

旬菜いまり

京都市中京区西六角町108

電話：075-231-1354

営業時間：7:30～10:00（L.O.）（最終予約受付9:30）、17:30～22:00（L.O.）