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京都肉三昧
龍馬も愛した京のかしわ。
高瀬川沿いで食す「水炊き」

写真・伊藤 信 文・永野 香(アリカ)

京都の肉といえば、忘れてはならないものがある。かしわ、すなわち鶏肉だ。
商店街に行けば、鶏のみを扱う専門店があり、宗教上「四つ足」の肉を避けた僧侶も含め、広く京都人に愛されてきた。

もちろん時代を遡れば京の街中にあって、鶏はご馳走。特別な日や客人をもてなすハレの食材で、それは京の過客にとっても同じだったろう。幕末、かの坂本龍馬がかしわを求めに訪れ、またその鍋も楽しんだという店が高瀬川沿いにある。1788年(天明8年)創業の『鳥彌三』。
瓦葺きに出格子、飴色の長押に遊び心ある細工が残る築約270年の主屋は、国の登録有形文化財にもなっている。

先祖は武士で、関ヶ原の戦いの後に鶏と魚を扱う店を錦市場に開いた。その後、一族の多くは鶏・魚の商いに携わり、やがて現在地に彌助が鶏店を設ける。当初は1階で鶏を飼い、息子の彌三郎が2階で料理も出すようになったのが『島彌三』の始まりだ。
「当時はさばいてから料理。その間お客様はお風呂に入りゆっくりされたようです」と語るのは、8代目の浅見泰正さん。

水炊き

そうして代々受け継がれてきた名物が、「水炊き」だ。ベースとなる鶏ガラの白濁スープは、主人と専属の職人が3日3晩かけてとる。
「加減を見つつ炊いては寝かしを繰り返すうち、軟骨が溶け出し、髄から旨みが出てきます」。
このスープと具材を別々に味わうのが『鳥彌三』流。まず、仲居さんが塩で味を調えスープを出してくれる。じわっとしみわたる濃厚な潤いだが、後口は驚くほどすっと切れる。
次にうずら卵を加えていただく。とろりとした旨みに、また唸る。

続いてこのスープで炊いた肉を、自家製ポン酢で。ほどよい弾力の骨付き肉は、丹波地鶏か名古屋コーチン。噛むほどに肉のしっかりした味が楽しめ、なじみ客の中には何もつけず食す人もいるとか。
「炊いておいしいのは、やはり身が締まった平飼いの地鶏。臭みのない生後3か月までの、肉質が軟らかい雌鶏を厳選しています」。添えられた京都産の菊菜や豆腐、店でついた餅などの具もそれぞれに快い歯ごたえで、素材そのものの風味が広がる。締めには鶏卵を溶いた雑炊。これがまたするりと胃袋に収まり、至福。

浅見さんによると、鶏がよりおいしくなるのは「夏を乗り越えた生命力と出合えるこの季節」。龍馬もくつろいだ座敷が残る老舗で、京で愛され続けてきたかしわの滋味をご堪能あれ。

鳥彌三

京都市下京区木屋町通四条下ル斎藤町136
電話:075-351-0555
営業時間:夕方~ 22:00(L.O.20:30)
定休日:不定休
水炊きコース13,200円~
(税・サ込、要予約)

  • 新型コロナウイルスの感染症の影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。

*掲載情報は2020年12月号掲載時点のものです。

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