京の朝食

京都駅近くの朝名物
後味すっきり、優しい一杯

写真・木村有希 文・澤井祐輝(アリカ)

「朝からラーメン」と聞くと驚く人も多いだろう。福島県喜多方や静岡県の一部地域では戦前から親しまれる習慣だったというが、近年「朝ラー」のフレーズとともに全国に裾野を広げつつある。

関西屈指のラーメン激戦区として知られる京都にも、早朝から多くの人が列をなす一軒がある。1947年(昭和22年)から営業する『本家第一旭 本店』だ。店を構えるのはJR京都駅のほど近く。ターミナル駅前という立地から、創業当時より始発前に出勤する駅員をターゲットに早朝営業を行っていた。

現在は夜勤明けの常連客や、夜行バスで到着した観光客、出張で前泊したビジネスマンなどがこぞって朝から足を運ぶ。

朝6時の開店前からできる行列は、店のある通称「たかばし」と呼ばれるエリアお馴染みの光景だ。開店するや否や店内は満席になり、早朝とは思えない活気にあふれる。

ラーメン

行列の先に待つラーメンは、豚骨ベースの醤油味。黄金色の清湯スープの出汁に用いるのは、出産を2回経験した体重120キロ程度の国産雌豚のみ。「脂肪分が少なく、余分な脂が出てこないんです」と語るのは、4代目店主の森田孝祐さん。

また短時間で一気に炊き出すことで、雑味や臭みなどが出る前に良質の脂と旨みだけを抽出。そうして取った出汁に「キレと甘みがあり、京都の水とも良く合う」と伏見の醸造所『五光醤油』の生醤油を合わせて奥深い味わいに仕上げる。

ふわりと香る小麦の風味とモチモチ食感が特徴の中太ストレート麺は、人気ラーメン店御用達の製麺所『近藤製麺』のもの。あっさりしたスープもよく絡み、スルスルッと喉を通っていく。トッピングはたっぷりの九条ネギに焼豚、緑豆もやしといたってシンプル。とはいえ、九条ネギはスープや麺と同じくらい大切な要素だという。

スープに負けることなく主張する香りと味、シャキシャキの食感がアクセントを添える。丼を覆う焼豚は、「チャーシュー赤」と注文すれば赤身多め、「チャーシュー白」と注文すれば脂身が多めになり、好みで注文するのが通のスタイルだ。

「ここ数年『朝ラー』が浸透してきたこともあり、朝のお客さまが一段と増えました。9時〜10時頃は比較的落ち着いている時間帯なので、少し遅めの朝食として食べていただいても」と森田さん。創業時から七十余年、味も素材も変えることなく京都人の胃袋を支えてきた一杯。京の朝食の一味違う選択肢に、ラーメンを加えてみるのも悪くない。

本家第一旭 本店

京都市下京区東塩小路向畑町845

電話:075-351-6321

営業時間:6:00~25:00

定休日:木曜

https://www.honke-daiichiasahi.com/

「ラーメン」800円(税込)

※ 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。

*掲載情報は2022年10月号掲載時点のものです。

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澤井祐輝(アリカ)さんが綴るコラム【京の朝食】。今回は「京都駅近くの朝名物後味すっきり、優しい一杯」。