京の朝食

蓋を開けた瞬間に
思わず歓声があがる
美しい手毬寿司

写真・伊藤 信 文・藤本りお(アリカ)

色とりどりの手毬寿司が並ぶ様子は、まるで宝石箱のよう。「つまみ寿し」と名付けられたひと口サイズの可愛らしい姿の全15個。旅の朝、この春めかしい彩りに目を楽しませながら、ゆったりと味わう時間は何とも贅沢だ。

京都市街地の北部、北大路駅からすぐの閑静な住宅街に、『花梓侘』は佇む。元々は、現在も店の表で営む和食器店『セゾン・ド・ジャポン』として、北山で開店。全国から訪れる客に店の器で食事が出せたらと、一角で1995年(平成7年)に和食店を始めたという。

看板メニューの「つまみ寿し」が誕生したのはその6年後。オーナー柏井順子さんの娘、梓さんが中心になって考案した。ヒントになったのは京都の和菓子で、寿司が盛り付けられている箱も、上生菓子に使われるものだ。

華やかな見た目に、女性客が大半かと質問すると、そうでもないという。「一人で来られる男性のお客様も多いですよ。皆さん、可愛いものがお好きですから」と順子さん。「つまみ寿し」を肴に、朝からお酒を嗜む人もいるのだとか。

メニューは春夏秋冬の季節によって、少しずつ食材や装いを変える。春は、椎茸の旨煮に菜の花を飾り、生湯葉の上には桜麩を、若竹煮や小鯛でも季節感を演出。『ゆば長』の生湯葉や『麩嘉』の生麩といった京都の有名店の食材をはじめ、鉄分で色付いた滋賀県の赤こんにゃくなど近隣の郷土食も。

また、広島県の宮島口に本店を構えるあなごめしの名店『うえの』の焼穴子といった、食通の順子さん自らがおいしいと認めた日本各地の味覚も登場。厨房に立つのは柏井さん母娘。ちなみにスモークサーモンが入るのは、家族皆の好物だからとか。

京都の寿司は甘めの味付けが多いが、シャリには江戸前と同じくすっきりとした赤酢を使う。酸味がまろやかでコクが出る。店内での食事には、赤だしと「粒あんと栗の茶巾絞り」「白味噌のアイスクリーム」など4種類から選べるデザートが付く。寿司・デザートともに甘さ控えめで、健康に気をつかう人にも評判がいい。

季節を映した美しい朝食を堪能した後、上賀茂神社や大徳寺といった、洛北の観光地へアクセスしやすいのも魅力だ。手土産にもできるようにと、魚は酢で締めるなど日持ちのする工夫が丁寧に施されている。テイクアウトや取り寄せで、京の思い出に自宅でも堪能してみてはいかがだろう。

花梓侘

京都市北区小山下内河原町3-3

電話:075-491-7056

営業時間:朝食9:00~10:30(L.O.)、昼食11:30~13:30(L.O.)、テイクアウト9:00~17:00 ※予約がベター

定休日:水曜、第2・4火曜

http://kyotojapon.co.jp/k/

「つまみ寿し(15貫)」3,630円(税込)

*掲載情報は2023年4月号掲載時点のものです。

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藤本りお(アリカ)さんが綴るコラム【京の朝食】。今回は「蓋を開けた瞬間に思わず歓声があがる美しい手毬寿司」。