京都、路地のなじみ

滋味深く、心が躍る
メトロポリタンな朝餐

写真・伊藤 信 文・西本遙菜

京阪「七条」駅近く、鴨川沿いの川端通から東方向へ進む。三本目の本町通はかつて東福寺などへの参詣道として賑わったというが、現在は住宅が立ち並ぶ、ひっそりとした通りだ。南へ進むと、白いタイル張りビルの柱にフクロウの絵が描かれた小さな木の看板が立て掛けられている。広東式焼味シュウメイの店『小梟シャオシャオ』だ。

銀色の引き戸を開けると、シナモンや八角などのスパイシーな香りに包まれる。モルタル造りのカウンターがスタイリッシュな店内だが、手製の木の長テーブルもあり、温かみのある雰囲気も漂う。

店を営む米田勲さんは、料理人としてはやや異色の経歴だ。元は大工。20代で憧れの地、アメリカへ渡った。たまたま働き始めたニューヨークの日本食レストランでやがて厨房の主力となり、型にとらわれない創作メニューを繰り出すようになった。帰国後の2021年、香港帰りの友人とローストダックのテイクアウト専門店『小小幸福シャオシャオシンフー』を京都・四条烏丸で開店。翌年、ゆっくり料理を味わえる店にと現在地に移転、名前も新たに『小梟』を開いた。下味を付けた肉類を炙り焼きにする「焼味」を中心に、モダンにアレンジした広東料理を供している。

営業は朝から。そこで人気を集めているのが、予約制の朝食メニュー「干し貝柱の香港粥と18種の小鉢」だ。香港粥のボウルを、ピータン黒酢や胡麻団子といった王道中華から、しめ鯖や柴漬けなど京都らしい一品まで、色鮮やかな18の小鉢がずらりと囲む。「わざわざ足を運んでもらうには、インパクトのあるものをと考えてこの形になりました」と米田さん。実際、朝一番、スーツケースを引きながら訪ねてくる旅人も多いそうだ。

主役の香港粥は、ジャスミンライスを丸鶏スープで一日かけてじっくり炊く。具材は干し貝柱と干し海老、薬味には生の生姜。調味料は塩だけだが、素材の味が融け合い、まるでポタージュのようにとろっとした粥は、身体に沁み入るような滋味深さ。粥のアクセントとなる多彩な小皿は辛すぎず、甘すぎず、濃すぎず。爽やかな味もあり、起きぬけの胃にも嬉しい。紹興酒とも合うから、朝から杯を傾ける人もいる。

小鉢の内容は季節に応じて、あるいは新しいアイデアが湧いてきた時に変わる。年に一度は訪れる香港の美食をはじめ、各国の料理から日々刺激を受けていると話す米田さん。「“降ってくる”時があるんです。型にとらわれず、自由にやりたいなと思っています」

京都だけど京都じゃない、どこか異国の風が吹く店。遠方からの客足が絶えない秘密の一端を覗いた気がした。

小梟(シャオシャオ)

京都市東山区本町8-89-1

電話:075-746-4583

営業時間:8:30~11:00(L.O.10:00)、11:30~15:00(L.O.14:30)、17:00~21:00(L.O.20:30)

定休日:月曜、第2・4日曜、ほか不定休あり

https://www.instagram.com/xiaoxiaokyoto/

「干し貝柱の香港粥と18種の小鉢」2,500円(税込、要予約)

*掲載情報は2026年8月号掲載時点のものです。

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西本遙菜さんが綴るコラム【京都、路地のなじみ】。今回は「滋味深く、心が躍るメトロポリタンな朝餐」。