京都、路地のなじみ

時を忘れてくつろげる
大人の隠れ家カフェ

写真・畑中勝如 文・石嵜綾子(アリカ)

オフィスビルが立ち並ぶ烏丸御池界隈。7月は祇園祭の絢爛豪華な山鉾が巡行することでも知られるが、そんな賑やかな一帯からすぐの路地奥に、ひっそり隠れるように一軒のカフェが佇んでいる。

御池通から柳馬場やなぎのばんば通を南へしばらく進むと、よく見ていなければ通り過ぎてしまいそうな細い路地が左手に延びている。入り口にはいくつもの表札が連なって掲げられ、名字と並んで『Cafe 火裏蓮花かりれんげ』の札が。石畳を進めば喧騒は遠のき、別の世界へ足を踏み入れた心地になる。

小さな自転車が前に置かれた町家の扉を開けると、水琴窟の音色がかすかに響く。奥の庭を望む窓からは、やわらかな日が差し込んでいた。穏やかな空気に自然と肩の力が抜ける。ここは、築約150年の町家を活かして2007年に開かれたカフェ。「長い年月を経てできた柱の傷や土壁の質感、手作りの木の机……今の建物では決して醸し出せない雰囲気が好きで」と語るのは、3代目店主の新井伸吾さん。先代のもとでアルバイトをしていた妻から、コロナ禍で閉店すると聞き、自身は当時異業種に就いていたものの思い切って店を継いだのが2021年のこと。店の名もその空気感も、初代の頃から続くメニューのレシピも受け継ぎ、歴史をつないできた。

メニューは素材や配合に新井さんなりのアレンジを加えて進化させている。「大人のブルーチーズケーキ」もそのひとつ。デンマーク産のダナブルーをふんだんに使い、チーズの風味をより際立たせた。赤ワインと合わせて楽しむ人も多いという。口へ運べばブルーチーズの芳醇な香りと濃厚な風味が広がり、程よい塩味と甘みが後を引く。添えられた自家製マーマレードやピンクペッパーとも絶妙に合う。ほかにも宇治の抹茶の苦みと甘みのバランスが秀逸な「まったりお抹茶ミルクケーキ」、冬から春にかけて登場する伏見の酒蔵の酒粕を使った「酒の花チーズケーキ」など、大人向けのスイーツが好評だ。コーヒーには京都・西洞院蛸薬師近くの『アイオライトコーヒー ロースターズ』の深煎り豆を使用。ケーキの濃厚なコクをほろ苦さが心地よく引き締める。

カップに使う小鹿田おんた焼のほか、信楽焼、スリップウェアなど新井さんの好みで揃えられた味わい深い器や、壁際に置かれた山野草も趣ある空間と調和している。カップルの来店も多いが、平日はゆっくり流れる時に身を委ね、読書などに没頭する男性の一人客も珍しくない。

古都とはいえ、歴史を纏った建物が減りつつある京都の街。だがここは今も、町家が宿す美質と空気を確かに伝え、訪れる人の心を静かに解きほぐしている。

Cafe 火裏蓮花

京都市中京区柳馬場通姉小路上ル柳八幡町74-4

電話:075-213-4485 

営業時間:12:00〜18:00(L.O.17:00)

定休日:火・水曜、ほか不定休あり

https://www.instagram.com/cafe.quarirengue/

「大人のブルーチーズケーキ」950円、「コーヒー(深煎)」650円(共に税込)

※現金払いのみ

*掲載情報は2026年7月号掲載時点のものです。

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石嵜綾子(アリカ)さんが綴るコラム【京都、路地のなじみ】。今回は「時を忘れてくつろげる大人の隠れ家カフェ」。