京都、路地のなじみ

ネルで丁寧に淹れられた
心ほどける、まるい味わい

写真・伊藤 信 文・白木麻紀子(アリカ)

かつて東海道の終着点として旅人が目指し、今も多くの人が行き交う京都・三条大橋。そこから北へ約5分ほど歩けば、賑やかな三条通とはうって変わった静かな住宅街となる。南北に走る新麩屋町通から西へ延びる路地の奥に佇むのが、2025年2月に開かれた自家焙煎珈琲店『LOB COFFEE HOUSE』だ。

人ひとりが通れるほどの狭い路地を進むと右手に現れるのが、チョークで営業時刻が書かれたドア。開けるとそこは、小さなテーブル2つにカウンターだけの、全7席の喫茶空間である。

温かな照明のもと柔らかな色目の珪藻土の壁、木のカウンターにマドラーが品よく収まる陶の壺、そしてレコードプレーヤーから流れる程よい音量のジャズ……。開店からまだ1年も経たないのに、まるですべてが昔からそこにあったかのような、穏やかで端然とした空気に充ちている。

この店の若き主・大野夏央澄なおとさんは京都府出身。進学先の東京でのアルバイトがきっかけで接客の面白さと珈琲に目覚めたという。いつか自分の店を開きたいと全国200軒超の珈琲店を巡り、各店の間取りやメニューなどをメモに書きためていった。

大学卒業後は京都に戻り、珈琲通にはよく知られた『市川屋珈琲』に入店。ホールから焙煎まで、すみずみまで行き届いた珈琲店のあり方を体で覚えていった。そして4年後、「京都の普段の生活が感じられて大好きなエリア」という現在地に店を構えた。

看板メニューの「ハウスブレンド」は「日々の暮らしに寄り添い、飲み飽きないもの」を指針に生み出した、エチオピアベースの中深煎ブレンド。ネルドリップで丁寧に抽出された一杯は華やかさとネル特有のとろみ、まろやかな甘みをもち、すっきりきれいな後口でまさに飲み飽きない。

180cc弱の小ぶりのカップでの提供にも理由がある。「このサイズが一番おいしいと思っています。もう少し飲みたかったなという余韻が残る、丁度良い量」と大野さんは静かに語る。

毎朝、直火で焙煎する豆は3日ほど寝かせてから使う。その日の気分に合ったものを選んでもらえるよう、ハウスブレンドに加えて、深煎ブレンドやシングルオリジン、デカフェまで約5種類を用意している。タマゴサンドやラムレーズンシュークリームなど軽食やスイーツも、すべて自家製だ。

珈琲の味、しつらい、店主のもてなし、店を構成する要素のすべてが訪れた者にそっと寄り添ってくれる。身を委ねたくなる心地良さは、壁に下がる数多の珈琲チケットが証明している。

LOB COFFEE HOUSE

京都市左京区大菊町134-8

電話:なし

営業時間:金・土・日曜 13:00~20:30
月・火曜 9:00~20:30

定休日:水・木曜

https://www.instagram.com/lobcoffeehouse/

「ハウスブレンド」700円、「ラムレーズンシュークリーム」500円(共に税込)

*掲載情報は2026年3月号掲載時点のものです。

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白木麻紀子(アリカ)さんが綴るコラム【京都、路地のなじみ】。今回は「ネルで丁寧に淹れられた心ほどける、まるい味わい」。