京都、路地のなじみ

命に感謝し味わうジビエ
その滋味を余すところなく

写真・畑中勝如 文・藤本りお(アリカ)

京都市北区柴竹しちく。大徳寺の北東にある閑静な住宅街を今宮通から南へ。賑やかな観光エリアとは異なり、周りはどことなくのんびりとしている。普段着の京都といった趣の、車一台通るのがやっとの細い通りに、フランス国旗がはためく。

『ビストロ シック』オーナーシェフの石橋賢さんはこの界隈で育ち、近くの今宮神社などの祭りにも携わるという。地元に開いた店は、築75年の古民家。以前はカフェとして使われていたものを改装し、2018年にオープンした。

入り口の引き戸を開け、靴を脱いで畳の間へ。古い建具が残る和の空間に飾られた雄鹿の角や、杉の丸太を使ったショープレートが気分を盛り上げる。「森にいるような雰囲気のなかで、自然や生き物への思いを改めて感じてもらえたら」。

ここで味わえるのは、ジビエ料理。メニューはコースのみで、野生の鳥獣を骨や内臓を含め丸ごと仕入れ、すべてを余すところなく使う。

最初にサーブされるのは「杉坂の船水」だ。北区・京見峠に湧く名水で、石橋さんが自ら汲んできたもの。「命を頂くので、まずお清めから」。

店の料理の根幹であり、スペシャリテとして登場するのが「ジビエのコンソメ」。骨や筋、端肉を、部位ごとに浅く炒ったり、深く炒ったりした後、野菜やハーブ、スパイスと一緒に赤ワインと杉坂の船水で一週間かけてじっくりと煮込む。素材はその時々で異なり、この日はシカとイノシシ、ツキノワグマ、ハト。ちょうど質の良い内臓肉が入ったためミンチにし、アクや雑味、濁りを取る仕上げにも使ったという。味付けは岩塩のみ。濃い色合い、だが澄んだスープをひとさじ口に運ぶと、野性味を感じる深い味わいと香りがワッと広がり、体の奥から活力が湧いてくる気がする。

「野生の鳥獣はどんな状態のものが手に入るか分からないので、素材を見て初めてどう調理するか考えます」と石橋さん。メイン料理の素材となるのは、シカやイノシシのほか、カモやウズラ、ライチョウといった野鳥も。赤ワイン煮込みやロースト、パイ包みにすることが多い。フレンチのクラシックな料理として完成されたジビエ料理は「奇を衒てらわないほうがおいしい」というのが石橋さんの哲学だ。

ナチュラルワインが揃い、ジビエとの相性を知り尽くした石橋さんによるペアリングもお薦め。以前は年配のなじみ客が多かったが、最近では30代~50代、さらには若いカップルが記念日デートに訪れることもあるとか。特別な日に店名通りのシックな渋い空間で、その滋味を心ゆくまで味わいたい。

bistro Chic(ビストロ シック)

京都市北区紫竹西高縄町10-1

電話:075-406-7402

営業時間:12:00〜15:00(L.O.14:00)、18:00〜22:00(L.O.21:00) ※前日までに要予約

定休日:不定休

https://www.bistro-chic.biz/

「Dinner menu」10,980円(税込)~

*掲載情報は2026年10月号掲載時点のものです。

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藤本りお(アリカ)さんが綴るコラム【京都、路地のなじみ】。今回は「命に感謝し味わうジビエ その滋味を余すところなく」。