京都、路地のなじみ

隠れ家のような階段の先に
待ち受ける、旬魚の口福

写真・伊藤 信 文・山下崇徳(アリカ)

オフィスビルやホテルが立ち並ぶ烏丸五条からすまごじょう界隈。車の往来が激しい交差点から東へ進み2本目の細い通り、東洞院通ひがしのとういんどおりを少し北上するとその店は現れる。2007年に開業、5年後にはミシュランの星も獲得した『魚料理 あぎやお』だ。

通りに面した『バルagiyao』の入口脇にひっそりとある淡いグレーの扉。その上部の、柔らかな明かりに「あぎやお」の文字を認めて階段を上っていくと、ほの暗い空間に杉の一枚板のカウンターが浮かび上がる。喧騒から切り離された10席のみの店は、まるで隠れ家のよう。

この店のオーナーは、魚の目利きにかけて一目置かれる料理人・青柳旭紘さんだ。24歳から料理の世界に入り和洋の店で修業を重ね、30歳で独立。修業先での数々の高級魚との出会いにより、その奥深い美味に開眼したという。魚好きはもちろん、魚の苦手な人にもおいしさを伝えたい一心で、店は魚料理専門となった。

毎朝、京都市中央市場に足を運び、なじみの仲買店へ。たとえば秋のブリなら「脂がのった北海道産」といった具合に、時季ごとに一番良い漁場で獲れた魚を自分の目で確かめて吟味し、仕入れるのが、青柳さんの信条だ。そして旬魚の旨みを最大限に引き出していく。

『あぎやお』ではアラカルトとコースがあり、炭火焼きや温物などにはいくつもの選択肢が用意されている。この日のひと皿は「金目鯛の酒蒸し」。千葉県産の鮮やかな金目鯛を、昆布出汁と塩、酒だけで仕上げた一品である。口に含めばほろっと軟らかな白身からじんわり甘みや旨みが広がり、思わず頬がほころぶ佳味。添えの細切りにした白菜の程良くシャキッとした食感も心憎い。

こうした野菜との組み合わせにこだわるのも、魚の味をより良く味わってもらうためだといい、たとえば、滑らかでクリーミーな雲子には歯応えのある蓮根を合わせる。「その素材の何を伝えたいかによって、味わい、香り、食感まで考えて選んでいます」と青柳さん。

ペアリングも追求し、魚の味が引き立つ各地の日本酒を常時約20銘柄そろえるほか、1階のバルで扱う白ワインを薦めることも。「日本酒が苦手な人も含め、すべての方に魚料理を楽しんでほしいので」。

そんな魚へのまっすぐな姿勢は、割烹『浜作』をはじめ京都の有名店を経て今、板場を任される料理長・犬飼久登さんにも引き継がれている。料理長独自の発想で繰り出される魚料理の数々には青柳さんも厚い信頼を寄せる。カウンター越しに、その巧みな手元や旬魚をめぐる会話を楽しみつつ至福の旨みを堪能したい。

魚料理 あぎやお

京都市下京区東洞院五条上ル深草町592-3 2階

電話:075-344-8070

営業時間:16:00~24:00 ※要予約

定休日:不定休

http://sakana-agiyao.jp/

「金目鯛の酒蒸し」3,500円(税込)

*掲載情報は2026年11月号掲載時点のものです。

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山下崇徳(アリカ)さんが綴るコラム【京都、路地のなじみ】。今回は「隠れ家のような階段の先に待ち受ける、旬魚の口福」。