インタビュー
写真・福田喜一 文・渡邊卓郎
Photographs by Kiichi FUKUDA Text by Takuro WATANABE
外観完成予想CG
効率やスピードが優先されがちな現代の邸宅づくりにおいて、その時流とは一線を画すようなラグジュアリーの本質がある。2028年、関西屈指の品格が漂う兵庫県・旧住吉村に誕生する「ジオグランデ住吉山手」。阪急阪神不動産の吉森裕樹氏と、日建設計の小森真一氏の対話から、この地にふさわしい設計美学をひもとく。
外観完成予想CG
二棟の住居棟と共用棟で構成される。二棟に分割したことで、敷地内に心地良い風が通る。
土地の品格は、目に見える意匠だけで測れるものではない。大正から昭和初期にかけて、日本の近代経済の礎を築いた高名な財界人たちがこぞって本邸を構え、「日本一の富豪村(※1)」と称された兵庫県・旧住吉村。その一角、本物件の地主一族の邸宅を初めて訪れたとき、吉森氏と小森氏は、住環境の品格と土地の質に衝撃を受けたという。
着工した現場では、掘るほどに強固な岩盤が現れたため施工においては難度を極めたが、この強固な地盤こそが先人たちがこの地を選んだ理由であったと、改めて実感させられた。
「阪神間の山手側は古くから由緒ある住宅地として評価されてきましたが、その背景には積み重ねられてきた文化の重層性があります。この地は良質な御影石を産出する土地だからこそ、先人たちはその自然素材を活かして邸宅や石積みを作り、現在の住吉山手の風景を生み出しました。地主一族の邸宅にも巨石を用いた石積みや水景があり、中を拝見した際、外と繋がった心地よい住まい方に感銘を受けたのです。その大切にされてきた記憶をもう一度すくい上げ、新たな風景として再構築することで、周辺環境にとっても良い影響が生まれ、歴史を紡ぐことで次の未来にふさわしい形ができると考えています」と、吉森氏はこの土地と向き合った心境をそう振り返る。小森氏が言葉を繋ぐ。
「今回のプロジェクトでは、土地の本質を表現するために『積層と水源』というテーマを掲げました。積層とは、歴史の重なりと強固な地盤のメタファーです。そして水源とは、六甲山が育む豊かな潤いの表現。実は近隣の『御影』という地名も、泉の水面に神功皇后が化粧を施す際、その姿を鮮やかに映し出したという伝承(※2)に由来するとされるほど、この地は水と深く結びついています」。
車寄せ完成予想CG
敷地中央に配置された格調高い車寄せ。私邸へ至るアプローチの優雅さを追求した。
吉森氏が「200戸は入りそうな土地に、わずか40戸という贅沢な計画です」と明かす通り、約2,000坪という広大な敷地に、わずか40邸を配する。本プロジェクトの配棟計画は集合住宅の枠組みでは捉えきれないものだが、この贅沢でゆとりのある住環境実現への道のりは平易なものではなかった。この地は「第一種低層住居専用地域」であり、建物の高さや用途に厳しい制限が設けられているからだ。小森氏は、設計における挑戦をこう語る。
「これだけの規模のハイグレードレジデンスを創るにあたり、このクラスにお住まいになるお客様のライフスタイルを考えると、潤沢な駐車場台数は必須条件です。しかし、この厳しい用途地域の中で十分な駐車スペースと邸宅のゆとりを両立させるのは至難の業でした。そこで敷地を二つに分割して申請し、それぞれに地下駐車場を構築した上で建物を『二棟構成』にするという設計で、この難題をクリアしました」。
二棟構成への選択は、結果として住環境の価値を美しく高めることとなった。コの字型に繋げず分棟とすることで、心地よい風が住戸間を吹き抜けるのだ。
外観完成予想CG
道路際から約1m後退させた位置に、敷地内から出土した石を用いて石積みを構築し、緑豊かなバッファを設けることで、街並みに調和した風景を創出した。
小森氏が「設計において最も知恵を絞り、労力をかけた」と回想するのが、広大な敷地だからこそ複雑化する動線計画だ。40戸に対して敷地が広いため、通常のマンションのように長い廊下を歩かせる設計では、帰宅時の体験が単調なものになってしまう。
そこで平面移動を一階と地下に集約。そこからエレベーターを細分化し、一基のエレベーターが対応する戸数をわずか3~4戸に限定した。地下駐車場で車を降り、エレベーターに乗り込めば、私邸へと直行でき、プライベート性を確保できる。そして、通過点になりがちな地下動線にもアートを配し、豊かな余韻を演出しているのだ。
さらに、空間のゆとりを象徴するのが、敷地中央奥深くに配された車寄せである。道路沿いに作れば車路も短く、有効面積を広く確保できるため効率的ではあるが、あえて敷地の中央に車寄せを内包させることで、優雅な余白を生み出した。このアプローチについて小森氏はこう語る。
「拝見した地主一族のかつての邸宅は、門をくぐると豊かな樹木の塀に囲まれていて、外からは家が一切見えないという素晴らしいアプローチを持っていました。その美しい帰宅体験をオマージュしたかったのです。道路側には重厚なロートアイアンのゲートと樹木による邸宅の風格を纏わせ、ゲートが開いた奥深い場所で、木々に包まれながら優雅に乗降ができる空間を創出しました。外界の喧騒を離れ、私邸へと至るドラマチックなシーケンスの起点としてデザインしています」。
共用棟完成予想CG
共用棟内部。外観や内観の主要部には、ジュラ紀の化石を含み一石ごとに異なる表情を見せる天然石「ジュライエロー」が選ばれた。
ホール完成予想CG
地下動線には「積層と水源」をテーマにした光のホールやアートを配置。
関西圏でも類まれな住環境の創出にふさわしく、室内空間における快適性の追求にも余念がない。
特筆すべきは、壁面から一切のノイズを排除した、洗練された空間設計だ。多くのマンションの壁面に見られる給気口を排除するため、天井内で全熱交換を行う「第一種換気システム」を導入。これにより、美術館のようにフラットで美しい壁面空間が実現した。
「本質的な快適性を突き詰めるなかで、『睡眠の質』も大きなテーマに掲げました。ブレインスリープ社の監修のもと、深く上質な睡眠に不可欠な『光環境』に着目したのです。メラトニンの生成を妨げないよう、リビングや寝室に段階的な調光・調色式のライトコントロールを導入し、時間とともに自動的に睡眠へ誘うシステムを構築しております」。
吉森氏は、クオリティコントロールのあり方をそう説明する。さらに共用廊下や共用棟には立体音響システムを計画しており、このレジデンスのためだけの専用楽曲により耳でも愉しめる仕掛けも構想されている。五感のすべてにおいて、住まう人を安らぎで包み込む思想が徹底されている。
阪急阪神不動産株式会社 マンション事業部の吉森裕樹氏。建物企画、工事管理までプロジェクト全体を統括し、計画の発足当初から一貫して携わり続けている。
「一般的なマンション開発であれば、確立されたノウハウを用いて効率化された生産システムがありますが、このプロジェクトではその常識をすべて捨て去りました。まるでゼロベースから創り上げるかのように、毎日が新しい勉強の連続でした。忙しく生きてこられた方が、ゆっくりと人生を過ごしていただくための場所。それこそが、このレジデンスが提供する唯一無二の価値だと確信しています」。
吉森氏は確固たる表情でそう語る。
「2022年の企画着手から4年が経ち、工事の進捗はようやく四分の一。ですが、これからの施工・実現段階こそが、最も情熱を注ぐ時期だと考えています。設計、施工、開発のチーム一丸となって、この住吉の地でしか成し得ない建築を現実のものにします」と、小森氏も未来を見据える。
効率や利便性という、現代社会が定めた物差しでは測りきれない建築。先人たちが積み重ねてきた美意識と歴史の重層性を自らの日常とし、そこに佇むだけで、土地の品格が心へと静かに染み渡っていく。この場所で紡がれる時間は、本物を愛する人々の人生において、優雅で深い安らぎに満ちた最高の休息をもたらすだろう。
Information
ジオグランデ住吉山手
物件情報の詳細、資料請求などについては、下記へお問い合わせください。
阪急阪神不動産株式会社
https://f.msgs.jp/webapp/form/10530_app_1077/index.do
Tel:0120-40-8984
営業時間:11:00~17:00(水・土を除く)
(※1)出典:神戸新聞NEXT「財界の名士が次々邸宅 神戸に『日本一の富豪村』」
(※2)出典:神戸新聞NEXT「『沢の井』ピカピカに 神戸・御影のわき水改修祝いお茶会」
物件購入代金をダイナースクラブカードで決済可能(手付金を除く)です。
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