銀座より道、まわり道
文・山口正介 イラスト・駿高泰子
Text by Shosuke YAMAGUCHI
Illustration by Yasuco SUDAKA
なにをかくそう、僕もそれなりのギター少年だった。ちょうど1970年前後はロックギターが流行った時期ではなかったか。僕は20歳くらいで、比較的、遅れてきたロック少年(?)だった。まわりの環境からして、恵まれていたと、今では思っている。
ミュージカル俳優であった義理の叔父の家には、エレキベースを弾く従兄弟の友人として、デビュー前のCharや、まだ10代だったプリズムの和田アキラたちが、毎日のように集まり、セッションをしていた。
また、僕が少しばかりご厄介になった小劇場の音楽は、はっぴいえんどの鈴木茂や、大学院生だった坂本龍一が楽曲を提供していて、舞台監督部の助手として彼らのアテンドをするのが、僕の仕事だった。いきおい、最先端の音楽に接することとなったのだ。
そんな状態であるから、僕もなにか楽器をやりたくなり、とっつきやすい楽器として、ご多分に洩れず、エレキギターを選択した。
僕は銀座に出ると、4丁目の山野楽器に通うようになる。整然と並べられたエレキギターを、それとなく眺めるだけでも楽しかった。あるとき、手にして爪弾いていると、「今日は指が動かないみたいだね」などと余計な茶々を入れる青年などもいて、そんな時代だった。
どうせ音楽は生かじりです。それでも周りのミュージシャンの真似をして、それなりのギターを入手した。
そして50歳前後になると、やっと余裕もできて、山野楽器で憧れの外国製エレキギターを2本とアコースティックギター、並びにギター弦や周辺機材を購入したのだった。
楽器の習熟度を測る目安に、その楽器を持っている、演奏できる、上手に演奏できる、という三段階があると言われている。しかしながら、僕は、あいかわらず第一段階の、ギターを持っている、というレベルに低迷している。
そんなギター歴があるのだが、いつの頃からか、銀座山野楽器からギター売り場がなくなってしまった。これは残念と思っていたら、10月17日から「ギンザギターガーデン」としてギターのコーナーが復活した。
各社、えり抜きの外国製エレキギター、エレキベースはもちろん、アコースティックギター、クラシックギター、ウクレレなどが並ぶ。簡単なリペアのコーナーも完備されているのが、ありがたい。
僕のギター熱も復活するのだろうか。とりあえずは、かなり長いあいだ、ケースに仕舞われたままになっているギターの弦を購入して、張り替えることにしよう。
やまぐち しょうすけ
作家、映画評論家。桐朋学園演劇コース卒業。劇団の舞台演出を経て小説、エッセイの分野へ。近著に『父・山口瞳自身/息子が語る家族ヒストリー』(P+D BOOKS 小学館)。
*掲載情報は2025年1&2月号掲載時点のものです。
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山口正介さんが綴るコラム【銀座より道、まわり道】。「復活、ギターの楽園」。