銀座より道、まわり道

懐かしい老舗が残る4丁目

文・山口正介 イラスト・駿高泰子

Text by Shosuke YAMAGUCHI

Illustration by Yasuco SUDAKA

昔どこかで読んだ記事によれば、日本の都会のビルは、ほぼ25年周期で建て替えられている。4棟に1棟が5年ごとに建て替え中、ということになるのかな。正確な計算式を忘れてしまって、申し訳ないが、その結果、二十数年も経つと、まったく別の街になってしまうという。

銀座通りでも、今現在、大きなものでは4丁目の三愛ドリームセンターが建て替え中だろうか。しばらく前には松坂屋銀座店がギンザシックスに生まれ変わった。だからといって新旧の交代が激しいというわけではないのが、銀座の銀座たる所以だ。そこで長年、営業していた老舗は、きちんと新築のビルの路面店として存続している。

特に、僕が知っている銀座の面影を残しているのが、三越の角から松屋銀座にかけての銀座通りに面した1ブロックほど。

懐かしい洋品店や子ども服の専門店が並ぶ。ここには確か玩具屋もあったと思うが、さすがにその店は見つからない。子ども心に、いつか入りたいと思っているうちに、玩具どころではない年齢になり、ついには入店しないままになってしまった。

その玩具屋のあった辺りにあるのがバッグの専門店、『イビサ』だ。

すでに創業60年というから、老舗の内だろう。懐かしさも手伝って、久しぶりに再訪してみた。

懐かしいというのは、今を去ること20年ほど前に、ここイビサで男物のショルダーバッグを誂えたことがあるのだ。

欲しいデザインのショルダーバッグがないので、探していたら、イビサの工房で誂えが利くというようなことを知って訪れたのだと思う。譬えは変かもしれないが、少年漫画雑誌が2冊、縦に入る革製のものという形状のバッグを探していたのだ。

地下に工房があり、当時は職人の方と話しながら、色々と材料や色合いを決めた。これは大変に上等で、いまだに愛用している。今は修理や日常的な手入れはしているが、持ち込まれたデザインで一から作ることはなさそうだ。

かねてから不思議な店名だと思っていたのだが、スペインのイビサ島からとったとのこと。イビサ島の住人が作る素朴な手作りバッグに創業者がインスパイアされたことによるという。

僕が久しぶりに立ち寄ったときは、クロコダイルの高級婦人バッグが並んでいた。もちろん紳士物もあり、財布などの小物も充実。母親から娘へと親子代々使い続けられるということをモットーにして、メンテナンスを心がけている。持ち味を生かしたエコな素材の導入もありがたい。

きちんと手入れをすれば、長期の使用が可能な皮革製品は、サステナブルで、自然に優しいものなのだ。僕のショルダーバッグも、今後何十年も愛用できるだろう。

やまぐち しょうすけ

作家、映画評論家。桐朋学園演劇コース卒業。劇団の舞台演出を経て小説、エッセイの分野へ。近著に『父・山口瞳自身/息子が語る家族ヒストリー』(P+D BOOKS 小学館)。

*掲載情報は2026年7月号掲載時点のものです。

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山口正介さんが綴るコラム【銀座より道、まわり道】。「懐かしい老舗が残る4丁目」。