今月の一皿

シェフが奏でる東京イタリアン

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by ​Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

麻布台ヒルズ。いつのまにか未来都市のような建物が立ち並び、新しい街ができた。行き交う人たちもお洒落だし、まるで映画の中にいるかのようだ。施設沿いに小径を歩いていくと、そっと佇む素敵なドアに出合う。ここが奥野ワールドの入り口。

今や都内で7店舗を展開するブリアンツァグループのオーナーシェフ奥野義幸氏による、今一番新しくて斬新なイタリアン、『DepTH brianza』である。

12席とアットホームな店だが、たくさんのこだわりがある。大きなドアを開けると、まず目に飛び込んでくるのは巨大なステンドグラス。カラフルで鱗のような模様は、奥野シェフが創り上げてきた数々の店と昇り龍を表現している。また、「奥野シェフのイメージがトリュフ料理だから」と知人の画家が描いた大きなトリュフの絵が壁に飾ってあり、トリュフ料理への期待も高まる。

「トリュフ、フォアグラ、甘夏」と題されたトリュフを使ったクレープが、「今月の一皿」だ。甘夏、白カビチーズ、サマートリュフ、ブラウンマッシュルームなどなど、この一皿で使われている食材を書けばキリがない。

12〜13種類くらいの食材を組み合わせたクレープだ。一口いただくと、食材の種類が多いことが不思議なくらい一つにまとまった味として感じられるから不思議だ。

「サザエと赤ホヤ」の料理は、洋風の茶わん蒸し。エスカルゴバターやかんずりがアクセントになって、ごろごろ入っているサザエの味を引き立てている。小さなお料理だが、ワイルドなサザエのインパクトに超満足だ。

メニューには食材名しか書かれていないので、料理が進むごとに産直の厳選素材がどう料理されるのか楽しみは尽きない。「マグロ、サンチュ、行者ニンニク」は、カルパッチョなのだが韓国料理のようにサンチュで包んで食べる一皿。手づかみでがぶりといただくと、サンチュに包まれたマグロにオリジナルオイルの酸味が混じりあって心地よい。

驚くことに、すべての料理でほとんど塩を使っていないそうで、魚介の塩味や野菜のミネラルなどをうまく組み合わせ、店名どおり味に深みを出しているそうだ。

それにしてもコース一皿ひと皿に妥協がなく、見た目にも美しい。「食材の99パーセントは日本産です」と奥野シェフ。東京でいただく日本の食材を使ったイタリアン。そんな奥野シェフの料理には「東京イタリアン」という言葉がしっくりくるのだ。

DepTH brianza

メニューは13品のフルコース(17,600円)と9品のショートコース(14,300円)からチョイスできる。紹介した料理はいずれも6月のコースから。飲み物はワインが中心だが、日本酒なども取りそろえる。ワインペアリングも9,900円と7,700円の2つのコースがある。*すべて税込。

住所:東京都港区麻布台1-2-3 麻布台ヒルズレジデンスA棟 2階

電話:03-6441-0148

営業時間:ランチ(土日曜・祝日のみ)12:00~15:00
ディナー平日17:00~23:00、土日曜・祝日18:00~23:00

営業時間:ランチ(土日曜・祝日のみ)12:00~15:00 ディナー平日17:00~23:00、土日曜・祝日18:00~23:00

定休日:火水曜(祝日の場合は営業)

*ご紹介したメニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2024年7月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「シェフが奏でる東京イタリアン」。