今月の一皿

ジョン・カナヤの味を箱根で

写真・永田忠彦 文・下谷友康

Photographs by Tadahiko NAGATA

Text by Tomoyasu SHITAYA

SNSで「繋がっている」よりも、本当に「ご縁がある」ほうが好きだ。

その昔、『鬼怒川金谷ホテル』の創業者であるジョン金谷鮮治氏が、『西洋膳所ジョンカナヤ麻布』というレストランを港区西麻布に開業したことがある。残念ながら2004年に閉店してしまったこの名店に、僕は何度か叔父に連れて行ってもらった。いつも食べている料理とはまったく違う、とてつもなく美味しいものだったという記憶がある。その料理を作っていたのは、カナヤ氏がシェフに抜擢した若かりし頃の坂井宏行氏、そう通称・ムッシュである。

ムッシュの弟子であり、本場フランスでもミシュランの星を獲得した若き名人・森祥崇氏がシェフを務めるのが、ここ『KANAYA RESORT HAKONE』のメインダイニング『西洋膳所 JOHN KANAYA』だ。西麻布時代の料理の遺伝子を受け継ぐシェフの、伝統的でありつつ新しい料理を再びいただける……こんな「ご縁」を、僕は素晴らしいと思う。

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さて、「今月の一皿」は、アミューズの「金谷玉子」を紹介したい。それは、半熟の卵とマッシュルームの泡ソースでできた一品。それに、マッシュルームのコンソメスープが添えられている。たったそれだけの中に隠された多彩な味とキノコの豊かな香りは、心の中に染み込んでくるはずだ。それなのでここはぜひ、お酒を我慢して味わってほしい。

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森シェフ一押しのメインは、「鴨もも肉のコンフィ」。じっくりとコンフィした肉は、ジューシーで軽快な味わい。身をほろほろと崩して付け合わせと一緒に食べるのもよし、思いっきりかじりつくのもよし、である。

また、箱根の森の中で食べる刺身は、長崎県五島列島からの逸品。放血神経締めという手間をかけた手法により旨み成分が最大限に引き出され、生臭さがまったくない最高の状態で味わえるのだ。つねにその季節の最高の食材にこだわり、新鮮さと熟成度にこだわる森シェフの料理は、シーズンごとに訪ねたくなる。

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そしてもう一つの楽しみは、なんといってもホテル客室の露天風呂である。箱根の豊かな温泉を存分に味わいながらテラス越しに見えるこの季節の紅葉は、日常を忘れる穏やかな時間になること間違いない。

西洋膳所 JOHN KANAYA

2017年11月にグランドオープンした『KANAYA RESORT HAKONE』のメインダイニングの同店。和の心をそっと織りこんだ、森シェフの季節のコース料理は、宿泊客の舌を楽しませている。紹介した料理はいずれもコースの中の一品。食事は宿泊客のみ。各種プランがそろうので、詳細はホテルにお問い合わせを。

住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1251-16

電話:0288-76-2030(9:00~20:00予約センター)

営業時間:朝食8:00~10:00(L.O.)、ディナー18:00~21:00(L.O.)

定休日:なし

*掲載情報は2018年12月号掲載時点のものです。

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ジョン・カナヤの味を箱根で。今回は箱根の「西洋膳所 JOHN KANAYA」をご紹介します。