今月の一皿

心躍る上海蟹の季節

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

駐日中国大使館の大使付き料理人として腕を振るったオーナーシェフ自慢の上海蟹料理。日本人にも優しく寄り添った料理は、心温まる絶品ばかり。シーズンが始まると、つい足が向かってしまうのだ

中国本土と香港に出張して慌ただしく帰国したら、日本はすっかり秋になっていた。秋といえば食欲が旺盛になる季節。そういえば本場で味わえなかったものがあった。それは上海蟹。ならばと、行きつけの中国料理店に仕事仲間でありゴルフ仲間でもある先輩たちを誘って突撃だ。

ここ『全家福 新館』は神保町駅からちょっと離れたところにあり、繁華街でもなくオフィス街でもないエリアの道路に面したわかりやすい場所にある。オーナーシェフの盖文魯カイブンロさんは、中国大使館と有名中国料理店の料理長を経た後、独立してこの店を構えた。「すべての家に福が来る」という幸せ感いっぱいの店名は、とても縁起がよさそうだ。

「今月の一皿」はもちろん「上海蟹」。そもそも上海蟹は江蘇省蘇州市にある淡水湖・陽澄湖ようちょうこ産のものが多い。諸説あるが、そこが割と上海に近いからわかりやすく上海蟹と呼ばれるようになったらしい。「10月は雌が美味しいです」と、シェフの息子さんで専務・支配人の世昊シュウホウさん。来月は逆に雄が美味しくなるとのこと。
年内は食べ比べが楽しみである。

さて、大きな皿に蒸しあがった上海蟹が登場だ。圧巻なビジュアルに気持ちが高まる。ていねいにほぐしてあるので、脚の先まで余すところなくいただけるのがうれしい。

前菜に頼んだ「紹興酒漬けとニンニク漬けの上海蟹」も絶品だ。特にニンニク漬けはシェフのオリジナルレシピで、これにはやっぱり紹興酒がドンピシャに合う。「フカヒレの壺煮込み」は、3日間かけてゆっくり戻したフカヒレがとても濃厚な味わい。繊維がしっかりしていて食べ応えも十分。

シェフは煮込み料理が得意というのも頷ける。シンプルな中にホッとさせる安心感があるのは、日本人の舌に合うように少しずつアレンジしてきたからだと思う。この味はきっと文魯さんから世昊さんへ引き継がれていくのであろう。

左:専務・支配人 盖世昊氏 右:オーナーシェフ 盖文魯氏

コロナ禍を経た今、「人と人との集まりを大切にしたいです」と世昊さん。個室もたくさんあるので、仲間同士や接待はもちろんだが、小さなお子さんがいるご家族でもゆっくり楽しんでもらえることだろう。

全家福 新館

紹介した料理3品が楽しめる季節限定の「上海蟹特撰コース」(全9品17,600円/2名様より)は、2004年の創業以来の大人気メニュー。同店の総席数はなんと120席。これからの季節、大人数の宴会から個室でのプライベートな会まで、用途は幅広い。*価格は税込。

住所:東京都千代田区神田神保町3-10-10 大行ビル1・2F

電話:03-3265-9886

営業時間:ランチ11:00~15:00(現金のみ)、
ディナー17:00~22:30(土曜・祝日は22:00まで)

定休日:日曜

*メニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。
事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2025年12月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「心躍る上海蟹の季節」。