今月の一皿

東京で出逢うバスクの味

写真・栗林成城 文・シグネチャー編集部

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Signature

スペイン・バスク地方と聞けば、食いしん坊はすぐに数々の美食を思い浮かべるに違いない。バスク地方にはミシュランの星付きの店が星の数ほど、とは言い過ぎかもしれないが、たくさんある。

その中で3つ星を36歳で取ったエネコ・アチャ・アスルメンディ シェフの店『アスルメンディ』には、世界中から美食家が通ってくる。同店の世界唯一の姉妹店があるのが、なんと東京なのだ。その名も『ENEKO Tokyo』。日本にいながらにしてバスクの本場の味がいただける。私たち日本人は、なんと幸せ者なのだろう。

オマール海老 青ネギ

東京の店を仕切るのは、磯島仁シェフ。店がオープンする前の4か月間、バスクの本店でみっちり勉強したという。「バスクと日本では食材の共通点がいくつもあります。『ピンチョス』と呼ばれるバスク伝統のつまみや小皿料理は、日本のお客様の口にも合うようです」と磯島シェフ。確かにメニューにはお馴染みの野菜や魚介の名前が並んでいる。

「今月の一皿」に選んだのは、温前菜の「オマール海老 青ネギ」。真っ白なお皿にガラス製のこんもりとした蓋がしてあり、その蓋を開けるとウィスキーオークのチップで燻製にした煙がフワッと立ち上がってくる。

中にはぷっくりとしたオマール海老とネギ、シブレットなど数種類の青いネギを使ったソースや、オマール海老のタルタルをコンフィにしたものが詰められたコルネが添えてある。燻香をまとったオマール海老の味はさらに濃厚に、青ネギはさまざまな食感と香りを楽しめる、大満足の前菜だ。

本物のレモンを器にしたビーツのタルタル
ピクニック

エンターテインメントも、この店の大事なコンセプト。冷前菜では、テーブルに大きなレモン(器です)が運ばれてくる。その中には本物のレモンを器にしたビーツのタルタルが。丸ごとオーブンで2時間もローストしたというビーツは甘みが増して、ほくっとした食感に。

その後、皮を剥いてタルタルにしたところにパセリのソースとマスタード、隠し味にフランボワーズのビネガーが加えてある。このほのかな酸味がビーツの甘みをさらに引き立てる。

磯島仁さん
店内

さて、もうご存じの方もいらっしゃるかもしれないが、こちらのもう一つの名物が“ピクニック”だ。2階のメインダイニングに向かう前、1階のグリーンハウスでバスケットに詰められたピンチョスをつまみ、バスク地方のワイン「チャコリ」で喉を潤すという趣向。いっそ東京にいることは忘れて、バスクの青い空を想像してみることをお勧めしたい。

ENEKO Tokyo

ご紹介した料理はすべて同店のシグネチャーコース「HELMUGA」(14,300円/税込・サ別)から。グリーンハウスでのピクニックから2階のメインダイニングに移動して、前菜、メインの魚・肉料理、デザートと全8プレートが楽しめる。バスク地方特有のワイン、チャコリと共に。

住所:東京都港区西麻布3-16-28 TOKION 西麻布

電話:03-3475-4122

営業時間:ランチ12:00~15:00(入店13:00まで)、ディナー18:00~22:00(入店19:00まで)

定休日:月・火曜

※2022年8月31日まで店舗改装のため臨時休業しています。

  • 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。

*掲載情報は2022年8&9月号掲載時点のものです。

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シグネチャー編集部が綴るコラム【今月の一皿】。今回は「東京で出逢うバスクの味」。