今月の一皿

海に山に。店主はハンター

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

釣りも、狩猟も、自らが足を運んで行う、究極のこだわりを持つ店主が営む日本料理店。春夏秋冬、その時々のホンモノの味を求めて、いざ、新潟へ!

記念すべき連載200回記念は、東京を離れてみた。どこに行こうか迷ったが、新潟県で四季それぞれのジビエを食べさせてくれるとても素敵な店に出合ったことを思い出し、早速訪れることにした。

東京から新幹線で約2時間、海と大地双方で豊かな自然あふれる新潟に到着だ。駅からタクシーで20分ほど走ると、閑静な住宅街に。ぽつっとさりげない表札を見落とすと、永遠にたどり着けないから要注意だ(笑)。

「祖父が大切にしていた庭を活かしたお店をつくりました」と『日本料理 福楽ふらく』オーナーシェフの媚山潤さん。趣のある灯篭を眺めながら小径を歩き、入口を通ると、大きな木のカウンターがバーンと迎えてくれる。ゆうに2階分の高さのある天井高やカウンター後ろのスペースなど、とても贅沢な空間が広がる。

媚山さんの趣味は、釣りと狩猟。自ら魚を釣り、狩猟をして食材を調達するというユニークなお店だ。ちなみに店名の「福楽」は、二人の息子さんの名前の一文字から取ったという。なんとも素敵な名前だ。

「今月の一皿」に選んだのは、「南魚沼のすっぽんと熊の鍋」だ。すっぽんの骨と熊のブイヨンを約15時間煮込んだ風味豊かな出汁をベースにした鍋は、熊の旨み200パーセント!

すっぽんとの相性も抜群だ。熊の脂身は臭みもしつこさもまったくなく、逆に赤身より脂身のほうが美味しく感じられるほどだ。

「鹿のたたき」は季節の野菜をあわせて軽く昆布じめ。こちらもクセがなく抜群の味だ。そして、この日の魚はアラ。媚山さん自らが釣ってきたアラを自家製の麹に漬け込んで寝かせたそうで、ふわっとした食感がたまらない。しめの一品はフキノトウとイノシシのそぼろご飯で、何杯でもお代わりしたくなる。

ご主人 媚山 潤氏

ジビエゆえ、いつも決まったものがあるわけではないが、早めに予約をすればできるかぎり獲物を探し、時に長年の信頼関係があるマタギからわけてもらうこともできるとのこと。四季折々の海の幸、山や空のジビエが味わえる唯一無二のお店だ。

最近は日本酒以外にワインにも力を入れていて、クラシカルからナチュールまでラインナップしている。これからの季節、夏の佐渡のマグロは絶品らしい。さあ、新潟に行こう!

日本料理 福楽

新潟のローカル・ガストロノミーを体現する店に贈られる「新潟ガストロノミーアワード」2023年の新人賞を受賞した媚山さん。新潟の海の幸、山の幸の双方を余すところなく楽しめるコースは2種類(8,800円と13,200円)用意されている。昼夜共に2日前に予約が必要だ。*価格はすべて税込。

住所:新潟県新潟市江南区大渕1196-2

電話:025-282-7459

営業時間:昼11:30~13:00(最終入店)、夜17:00~19:00(最終入店)

定休日:火・水曜

*ご紹介したメニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2025年6月号掲載時点のものです。

Recommends

会員誌『SIGNATURE』電子ブック版 ライブラリ
会員誌『SIGNATURE』電子ブック版 ライブラリ

電子ブック閲覧方法はこちら

下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「海に山に。店主はハンター」。