今月の一皿

アナゴとゴボウで秋を感じて

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

通称、プラチナ通り。「白金」の地名に由来している目黒通りと外苑西通りを結ぶこの通りには、お洒落なお店がたくさん並ぶ。ここから小径にさらに入り、ちょいと上を見上げると『REQUINQUER(ルカンケ)』と書かれた看板が見える。とても静かな場所にあるこぢんまりとしたレストランだ。本格的フレンチでありながら、実は遊び心満載だったりもして、最近の僕のお気に入りだ。

「ルカンケ」とはフランス語で「元気になって」という意味だそう。コロナ禍が続くこんなご時世だが、おいしい料理とワイン、そして会話があれば元気百倍だ。オーナーシェフの古屋壮一さんは物静かな印象だが、料理の話になると目の奥からぐっと力が湧き出てくるのがわかる。フランス料理と真正面から真摯に向き合い、積極的に攻めているからこその結果が、ミシュランの星獲得にもつながっているのだろう。

アナゴとゴボウ

さて、今月の一皿に選んだのは「アナゴとゴボウ」。カリッとさせたアナゴの骨がお皿を横切る芸術的な一皿だ。甘く煮たゴボウをアナゴでくるっと巻き、蕎麦ベースの粉を振ってフリットに。トッピングには千切りにしたゴボウをシェリービネガーソースでマリネしたものを。最後にゴボウパウダーをまぶして味を引き締めている。季節感のあるアナゴもさることながら、ゴボウの使い方が素晴らしい。

小石と葉っぱ
冷製のアワビ

遊び心のある「小石と葉っぱ」には驚かされる。小石の中に食べられる小石、葉っぱの中に食べられる葉っぱ。それぞれをぜひよーく見て、手に取ってほしい。冷製のアワビも秀逸だ。アワビは煮込んでやわらかくし、出汁と葛を合わせたものと和えてある。

自家製パスタにアワビの肝のオランディーヌソースを絡ませ、ミカンの皮を削ったものとキャビアを載せている。アワビにオランディーヌソースは斬新だが、きちんと計算された結果、とても味わい深い。

古屋壮一さん
店内

まだまだ紹介したいメニュー、そして驚きがあるが、それはぜひお店で。この地でスタートして13年、宣伝などは一切しておらず、リピーターの口コミが新たなリピーターを呼んだという。

メニューは月ごとに変わり、旬のもの、ほぼ国産の食材を使っているそうだ。クラシックでもありながら、前衛的なアイデアのある古屋シェフの料理を、毎月楽しみにしたいものだ。ちなみに、上の階が落ち着いたスペースだが、個人的にはオープンキッチンでザワザワ感のあるキッチン横の下の階が好きだ(笑)。

REQUINQUER

メニューはランチ、ディナー共に3種類のコース(ランチ/5,900円、8,700円、15,400円、ディナー9,900円、15,400円、19,800円。9,900円は平日限定、すべて税込)から。メニューの内容は「ルカン家の食卓」と題したお店のブログでチェックできるという、ゲストにはうれしいユニークなサービスを実施している。

住所:東京都港区白金台5-17-11

電話:03-5422-8099

営業時間:ランチ12:00~13:00(L.O.)、18:00~19:30(L.O.)

定休日:月曜

*ご紹介したメニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2022年11月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「アナゴとゴボウで秋を感じて」。