今月の一皿

焼き鳥をデザイン

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

日本を代表するアートディレクターの故・長友啓典さんの事務所があった六本木。その界隈によく飲みに連れて行っていただいたのが懐かしい。小さな公園があり、桜がきれいだったことを思い出す。そのすぐ近くに、前身の『燃west』の良いところを残しながら大きく進化した『燃es』が新しく店を構えた。

コの字型カウンターがメインの店内は、きりっとした雰囲気で心地良い緊張感が漂う。そのカウンターの中央で鶏を焼いているのが焼き手の沼能大輔さんだ。以前の店よりも席数を減らしたことで、よりこだわった攻めの火入れをし、焼き鳥を仕上げている。

メインで使う鶏は、愛媛県の『いなほ農園』の「媛っこ地鶏」というブランド。通常130日ほど飼育するところを180日に延ばした特別な地鶏だ。日数が増える分、脂肪が減り、味が濃くなってより旨みが出るという。

ねぎま

「今月の一皿」には同店オリジナルの豪快な「ねぎま」をチョイス。沼能さんは「お客様のために一串ひと串をデザインする」と言うが、この「ねぎま」ではネギと肉とを一口で味わえるように工夫している。鶏皮の脂で焼いたネギを鶏肉で包むという、ここでしか食べられない逸品だ。

噛んだ瞬間にパリッ、ふわっ、ジュワ〜っとくるたまらないほどのキレ具合は、沼能さんの卓越した火入れの技術の賜物だ。全部で10本の串の中には京都産の「七谷鴨」のロースもあり、また、隠れメニューとして茨城県から取り寄せるホロホロ鳥もあるそうだ。

11種類のサラダ
店長の河野真衣さんがセレクトするワイン

同店がさらに面白いのは、沼能さんのほかにシェフがいること。その森謙一郎シェフは、かつてフランス料理店で修業したこともあり、焼き鳥以外の前菜や茶碗蒸し、〆で出される究極の鶏そばを担当。ハイレベルな料理が食べられる。

おすすめの「11種類のサラダ」は、旬の野菜をそれぞれに合った手法で調理。素揚げしたり、焼いたり、蒸したりと、とても手のかかるものだ。ぜひ焼き鳥の合間に楽しんでほしい。

河野真衣さん
店内

店長の河野真衣さんがセレクトするワインはすべて国内産。ここ六本木から世界に向けて、日本ワインの良さを発信したいという願いを込めて、こだわっているそうだ。その珠玉のラインナップを料理に合わせて、ワインの個性も楽しんでほしい。

「焼き鳥ビストロ」……そんな言葉がぴったりのお店だ。

YAKITORI燃es

おすすめのメニューは「おまかせコース8,000円(税込・サ別)」。料理7品と焼き鳥10串に、〆の鶏そばというボリュームたっぷりの内容。日本各地から取り寄せるワインは、料理に合わせておすすめのグラスで。完全予約制で、レストラン予約サイトOMAKASEでのみの受付。

住所:東京都港区六本木7-13-10 宮下ビル1F

電話:03-6455-4554

営業時間:18:00~23:00

定休日:日曜、不定休

  • 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。

*掲載情報は2022年4月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「焼き鳥をデザイン」。