今月の一皿

初夏にぴったり。
イワシのパスタ

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

東京・渋谷区の広尾商店街。昔からの店と新しい店が不思議な調和を保ちながら街並みをつくっている。庶民的な鮮魚店があればカッコいいスタジオもあったり、雑貨店の隣がビストロだったり。近くに大使館も点在するから外国人も多く、ちょっとした異国感があって楽しい。

気持ちのいい風に吹かれて散歩しながら訪れたのは、今年でオープンして7年目となるイタリアン、『メログラーノ』。イタリアのいくつかの有名店で修業をし、数々のコンクールで優勝もしたオーナーシェフの後藤祐司さんの店だ。

ドアを開けると大きなシェフズカウンターが目に飛び込んでくる。手前に数席のテーブルもあるが、後藤シェフと話ができ、キッチンのライヴ感を楽しめるカウンターがなんといっても特等席。このちょっと奥行きのある広々としたカウンターがとても好きだ。

イワシの辛口サルデッラ和えと檸檬のパスタ

季節のメニューということで、初夏のイワシを使った「イワシの辛口サルデッラ和えと檸檬のパスタ」を作ってもらった。サルデッラとはイタリア半島最南端のカラブリア州の名物で、生シラスを唐辛子と塩で漬けて熟成させたものだ。

日本の塩辛みたいなものだが、唐辛子の辛味がピリッと効いている。この後藤シェフのお手製サルデッラは、チビチビと飲みながらのつまみにも最高だ。

イワシをサルデッラで和えたソース、仕上げにトッピングしたリコッタサラータというチーズや、レモンピールをパスタと少しずつ交ぜてグラデーションのようにして食べると特に味わい深い。高度な味の変化はさすがだ。

沖縄・熟成経産牛サーロイン
カンノーリ

滋賀県の有名な精肉店『サカエヤ』厳選の沖縄・熟成経産牛サーロインは、しっかりと熟成されていて特に赤身が素晴らしい。その塊を炭火でじっくりと、時間をかけて仕上げていく。口に運べば、甘く柔らかな肉の味そのものを感じる。後藤シェフによると、脂を感じさせないようにしっかりめに焼いているそうだ。

後藤祐司さん
店内

おすすめの「メログラーノコース」のメニューには、〝お好きなだけ〆のパスタ〞と書いてある。そのパスタのバリエーションを見ると、後藤シェフの引き出しの多さが半端ではないと感じる。パスタ好きにはたまらないサービスだ。

店の名前はイタリア語で「ザクロ」の意。種がいっぱい詰まったザクロを〝繁栄〞の象徴として、修業先の師匠が名づけてくれたのだとか。そんなところにも、思い出を大切にする後藤シェフのチャーミングな人柄を感じるのである。

メログラーノ

アラカルトメニューもあるが、〆のパスタを何種類でもオーダーできる「メログラーノコース」(13,000円/税込・サ別)がおすすめ。紹介した2品や後藤シェフがずっと作り続けているという南イタリア定番のスイーツ、カンノーリもコースに組み込まれている。

住所:東京都渋谷区広尾5-1-30 1F

電話:03-6459-3625

営業時間:ランチ12:00~14:30(L.O. 13:00/火、水、金、土、祝日)、
ディナー17:00~23:00(L.O. 21:00)

定休日:日曜ほか、不定休で月2日間

  • 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。

*掲載情報は2022年6月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「初夏にぴったり。イワシのパスタ」。