今月の一皿

ジビエの魅力を一皿に

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

広尾のフレンチ『マノワ』が再び扉を開いた。ハンターでありソムリエでもあるオーナーが手がけるのは、北海道の恵みを生かしたジビエ料理。ワインとともに味わう一皿が、食の楽しさを改めて教えてくれる

長い連載の中で、同じ店を複数回取材したことは一度もない。だが今回は、東京・広尾の『マノワ』にあえて再びスポットライトを当てた。

以前取材したあと、この店は実は一時期閉店していた。プリフィックスで好きなジビエを四季を通じて選べるという、実にワクワクする設定のレストランだっただけに、閉店と聞いたときはとても残念な気持ちになったものだ。ところがその後、2024年に再オープンを果たした。

オーナーソムリエの中村豪志さんに理由を聞くと、「より上質な空間、時間、そしてワインと料理を楽しんでいただけるよう準備していたんです」と教えてくれた。仕込みに時間がかかるフレンチの特性を踏まえ、ランチ営業をやめてディナーのみに変更。さらにプリフィックスはおまかせコースに改め、座席にもゆとりを持たせ、よりエクスクルーシブな時間を過ごせる空間へと生まれ変わった。その成果もあってか、2025年にはミシュランガイド東京で一つ星を獲得。さらに中村さん自身も「ソムリエアワード」を受賞した。

 『マノワ』で扱うワインはすべてフランスワイン。自社輸入しているオリジナルのシャンパーニュやブルゴーニュもそろえる。中村さんはゲストに寄り添いながら、料理に最も合う一本をセレクトしてくれる。

 「今月の一皿」に選んだのは、「羊の背肉ロースト」。北海道白糠町の酒井伸吾さんの羊は、放し飼いなのでストレスがない。だからこそ弾力があり、とてもミルキーな味わいだ。発酵パプリカのソースとの組み合わせが、羊の味をより引き立てる。

 「岩見沢の高麗雉のコンソメ」も、香り高く印象に残る。この雉を育てるのは地域の障害者施設のみなさんだ。食べる人と作る人が町おこしやSDGsに関わる試みは素晴らしいと思う。デザートはチョコレートとイチゴ、檜のアイス、そしてアードベッグ。スコットランドの蒸留所に自ら足を運んで出合った味を、デザートと組み合わせる遊び心が楽しい。

オーナーソムリエ 中村豪志

さらに北海道森町には、自らのジビエ解体施設も持つ。すべて自社で解体することで肉の鮮度を保てることが、この店の大きな強みだろう。

ハンターであり、ソムリエであり、そして料理を担当する齋藤克樹シェフとともに店を支える中村さん。ワインとジビエへの情熱、そして真のサービス精神が、新たな『マノワ』を心地よく演出している。

レストラン マノワ

重厚感のある木目調のインテリアが特徴の店内は、まるでフランスに来ているかのよう。齋藤シェフが厳選した食材で織りなすおまかせコースは19,800円(税込)。中村さんセレクトのワインで、極上のディナーが約束される。

住所:東京都渋谷区広尾1-10-6 1F

電話:03-6432-5015

営業時間:18:00〜20:00(L.O.)

定休日:日・月曜

*メニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。
事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2026年5月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「ジビエの魅力を一皿に」。