今月の一皿

すき焼き〝真〞スタイル

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

東京・港区にある「虎ノ門ヒルズ」や愛宕神社の反対側。オフィス街の、どう見てもオフィスビルとしか見えない建物の中の『松阪牛懐石 真』。
旨いステーキでも食べに行こうと友人に誘われたのが初めての訪問だったので、ステーキがメインとばかり思っていた。ところがよくよく看板を見ると「松阪牛懐石」と書いてある。
早とちりはいけないものだ。

すき焼き

ここはとにかくこだわりの店。オーナーの林英樹さんは、元々は金融業界からという異色の方だが、彼の話を聞いていると、僕にはこっちのほうが天職に思える。オーナー自ら生産者と直接やり取りをして1頭買いする松阪牛は品質はもちろんのこと、メニューに自由度がある。時には、総料理長の山本龍史さんに負けず劣らず、食に対しての思いが強い。この日も山本さんの得意としている温度管理について、オーナー自らが話してくれた。熱い思いがバンバンと伝わってきて話が盛り上がる。そんな食事の時間はとても楽しい。

ステーキ
フカヒレの姿煮

「今月の一皿」は、たくさんの肉料理の中から「松阪牛のすき焼き 真スタイル」を。松阪牛というのは脂がおいしいのが特徴。その脂を存分に堪能するために模索して行き着いたのが、「真スタイルのすき焼き」だ。
サーロインの芯の部分までじっくりと火入れをし、スライスする。ローストビーフのような状態にした肉に、甘みを控えた特製の割り下で味入れし、野菜を敷いた高温の鍋に載せる。
最後には客の前でもう一度特製の割下をじゅっとかける。常温の肉がお鍋の温度で温かくなり、閉じ込められていた甘みと旨みが口の中で一気に広がる。調理方法を変えて、肉の新しいポテンシャルを高めていく手法だ。

山本龍史さん
店内

松阪牛のステーキも、牛が食べるのと同じ藁を焼いて、その炎で炙る。
とにかくやることなすこと一手間どころか数手間かかっている。前菜のフカヒレの姿煮もおもしろい。松阪牛と名古屋コーチンの骨からとった白湯で煮込み、そこにたまり醤油などを足して仕上げる。ソースのトロトロ感がすごい。牛と鶏のコラーゲンが湧き出ているのを感じる。山本さんオススメのコースには、小皿のしゃぶしゃぶも入っていて、飽きないように工夫がされている。幸運な方は、松阪牛のホルモンとかタンもとやレバーなど、レアな部位にも出合えるかもしれない。訪問の際は、ぜひお電話にて尋ねてほしい。

松阪牛懐石 真

松阪牛を中心に懐石風に仕立てたコースは、10,000円と15,000円の2種類。
山本総料理長のおすすめは、しゃぶしゃぶ、すき焼き、ステーキと、人気の肉料理をすべて楽しめる15,000円のコース。コースの先付には「松阪牛の白湯と気仙沼産フカヒレの姿煮」(写真右)を。
*価格はすべて税抜きです。

住所:東京都港区西新橋3-15-12 西新橋JKビル 1F

電話:03-3438-3350

営業時間:ランチ11:30~14:00(L.O.)、ディナー17:30~22:30(L.O.)

定休日:日曜・祝日

  • 新型コロナウイルスの感染症の影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。

*掲載情報は2020年11月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「すき焼き‟真”スタイル」。