今月の一皿

寒い夜に恋しくなる、
街角の鉄板焼き

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

寒い夜、無性に食べたくなる鉄板焼きがある。麻布十番と白金高輪のあいだ、少し外れた場所。気軽さと確かな腕、その両方を備えたこの店には、通いたくなる理由がきちんとある

寒くなってくるとおでんや鍋を食べたくなるが、個人的にはなぜかもう一つ、"鉄板焼き"が恋しくなる。東京・麻布十番と白金高輪という、美味しい飲食店が数多く集まるエリアのちょうど中間あたりにぽつんと佇むのが、『鉄板焼なか川』だ。

鉄板焼きといっても、この店にはお好み焼きやとん平焼きなど、気軽に楽しめるカジュアルなメニューがそろっているのがうれしい。

実は広尾に『よしむら』という鉄板焼きの名店がある。その『よしむら』で店主の中川立也さんは長らく修業を積み、満を持して2024年に独立した。小さな店だが、その分、中川さんとの距離も近い。なかでも鉄板の前に設けられた、わずか4席のカウンターは特等席だ。

中川さんはオリジナルメニューの開発に意欲的で、いい意味での「おや?」「これは?」と思わせる料理を次々と考案している。その代表格が「焼きシーザーサラダ」だ。

消化に悪いとされるロメインレタスを試しに焼いてみたところ、意外にも鉄板との相性がよく、新メニューとして定着したのだという。ニンニクを豪快に混ぜたロメインレタスを、目の前でジュウジュウと焼き上げる。熱々のまま頬張ると、もう箸が止まらない。

「今月の一皿」に選んだのは「豚焼きそば」。麺は大井町のはやし製麺所に特注したものだ。多くの店が蒸し麺を使う中、中川さんは生麺にこだわる。そのほうが、もちもちとした食感としっかりしたコシが生まれるという。具材とのバランスも秀逸で、ほどよく絡むソースと相まって、こちらも"やめられない止まらない"一皿だ。

メニューには牛フィレやラムのステーキも並び、表面はカリッと、中はレアなど、焼き加減も自由自在。

高級シャンパンがあるかと思えば、焼酎やサワー、さらには"謎のテキーラ"まで隠し持っているという懐の深さも、この店の魅力だ。

岩田美帆子氏 店主 中川立也氏

10年来のサポート役だという岩田美帆子さんとの掛け合いも楽しく、店内にはライブ感がありながら、ほどよい距離感もあって心地いい。週末や祝日は16時から営業しているので、ゴルフ帰りの一軒にもぴったり。予約が取れなくなる前に、ぜひ訪れてほしい。

鉄板焼なか川

もちもちの麺の食感がクセになる「豚焼きそば」(1,600円)や「豚玉」(1,600円)、「焼きシーザーサラダ」(1,200円)をはじめ、季節の海鮮など、多彩なアラカルトがそろう。一番人気という「ラムステーキコース」(4,500円)、「さくっとおつまみコース」(3,500円)などもおすすめだ。*すべて税込。

住所:東京都港区南麻布2-7-23 マーキュリー南麻布2F

電話:03-6275-1340

営業時間:平日18:00~00:00(L.O.23:00)、土・日曜・祝日16:00~22:00(L.O.21:30)

定休日:水曜

*メニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。
事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2026年3月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「寒い夜に恋しくなる、街角の鉄板焼き」。