今月の一皿

ご縁が結ぶ、
西麻布の蕎麦割烹

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

西麻布の静かな路地にある蕎麦割烹は、料理も蕎麦も主役の一軒。季節の恵みを味わい尽くし、最後は香り高い蕎麦へと続く

「繋がる」よりも、圧倒的に「ご縁がある」ほうが好きだ。人やお店との出会いは、ご縁によって結ばれていると思っている。ゴルフ仲間の友人に教えてもらったこのお店も、いろいろなご縁が重なって出会えたことがうれしくて、すっかりお気に入りになった。

その昔、「麻布霞町」という艶のある名前の、住宅と飲食店が混在する閑静な街があった。今は西麻布と名前を変えたが、賑やかな大通りから一本裏の通りに入ると、今でも静かな場所がいくつも残っている。『そば割烹さとう』は、そんなエリアにある。

店内を覗くと、L字型の大きなカウンターが陣取っている。テーブルや個室もあるが、ここは店主の佐藤暢紀さんとの会話が楽しめるカウンターがおすすめだ。

この店のコース料理は、すべてが主役だ。それもそのはず、「料理も蕎麦も愛しているから」と佐藤さん。季節と旬の食材を何より大切にし、天然もの、産地直送の素材にこだわる。なかでも、出身地である岩手県の食材を特に大切にしている。

この日の「季節の前菜」は、伊勢海老の洗い、せいこ蟹、イイダコと筍の炊き合わせ。彩り豊かで、この季節の〝いいとこどり〟だ。「今月の一皿」には、あえて「蕎麦」を。なぜ蕎麦だけかというと、ここでは料理に名前がついていないからだ。「今日は良い鴨があったから」と、ドーンと鴨が蕎麦とともに出される。これを鴨南蛮でもいいし、鴨せいろでもいい。はたまた鴨鍋でもいい。好きな食べ方で蕎麦と合わせる。なんて贅沢で、楽しいんだろう。

もちろん蕎麦も愛する佐藤さんだから、蕎麦そのものもみごとだ。福井県の丸岡在来という希少品種を自家製粉する蕎麦は、香り高く、甘みもある。寒い日だったので、鴨南蛮が特別おいしかったのは言うまでもない。

店主 佐藤暢紀

春が近づくと花山椒がやってくる。鱧がやってくる。 そして秋、 冬へと、日本の食材をこれでもかと満喫した後、最後は蕎麦へと続く。それが『そば割烹さとう』の、変わらぬ心なのだ。

そば割烹さとう

食事は3種類のおまかせコース(20,680円、27,280円、32,780円)から選ぶことができる。全国各地から取り寄せた旬の食材を使用した料理と、福井県丸岡産の蕎麦の実を自家製粉した蕎麦を心ゆくまで楽しんで。右の写真はお刺身の盛り合わせ。4月と5月に提供される花山椒牛鍋は超人気メニューだ。*すべて税込。

住所:東京都港区西麻布2-24-20 1F

電話:03-3797-0163

営業時間:18:00〜23:00

定休日:月曜

*メニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。
事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2026年4月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「ご縁が結ぶ、西麻布の蕎麦割烹」。