今月の一皿

初夏の丸の内でオリジナル点心を

写真・永田忠彦 文・下谷友康

Photographs by Tadahiko NAGATA

Text by Tomoyasu SHITAYA

東京・丸の内の再開発で、このあたりはヨーロッパと見間違えるような街並みだ。石畳の上にはテーブルと椅子が並び、夕刻からはライトアップが始まる。高級ブティックに並んでお洒落なレストランも多い。とくに5月は気候も良く、街が華やかになる。

とある商業ビルに入りエスカレーターで2階にあがると、ど派手な真っ赤なエントランスが目に飛び込んでくる。いまや東京でも有名な点心の名店『ヤウメイ』だ。点心と言えば屋台料理とかおつまみ的なイメージがあるかもしれないが、この店のはまったく違う。一つ一つが独創的で、ここにしかない味だ。

エントランスを入ると、まずはバーカウンターが出迎えてくれる。その脇を通ると、クラシカルな中にもスタイリッシュなメインダイニングが広がる。そして点心料理店では珍しい巨大なオープンキッチンが、シェフズテーブル越しに構える。ここまで大きなライブ感のあるキッチンは珍しく、目が釘づけになる。

肝心の料理だが、とにかく楽しい。「今月の一皿」には迷いに迷った「揚げ湯葉と海老の腸粉」を。

お米の粉で作られたモチモチ生地を使い、海老を湯葉で包んで丁寧に揚げた一品は、カリカリの湯葉や海老と腸粉のもっちり感とのコントラストがすばらしく、これぞ他店にはない逸品だ。さまざまな食感が交わり、濃厚な旨みが一つになって口の中に広がる。

鹿児島産黒豚を使った「ハニーローストポーク」は、焼き窯で焼いた後にサラマンダーで仕上げる。表面はパリッとしながらもジューシーな味わいだ。その大きさに「こんなにたくさん!」と思うが、食べ始めると止まらないのである。

「点心盛り合わせ」の海老蒸餃子は一口食べると違いがわかる。プリプリではなくバリプリだ。「大きな海老の殻をむくところからやります。食感が全然違いますから」とエグゼクティブシェフの馬渕了さん。企業秘密だそうだが、「ここにしかない作り方がたくさんあります」と教えてくれた。

馬渕さんは京都出身。本場香港の味が楽しめた今はなき『福幸』という京都の名店で、香港人のシェフから多くのことを学んだ。当時、レシピをなかなか教えてくれない人たちの中で、師匠にだけ目をかけてもらったお陰で今がある、と謙虚だ。

言い忘れたが、エントランスの左側にはいくつかのテラス席があり、とても開放的な空間が広がる。梅雨時までの束の間、街路樹の緑の豊かさを味わいながら、そよ風を感じられる最高の場所だ。

ヤウメイ

まずは定番の「点心盛り合わせ」(2,000円)でビールでも飲みながら、ほかのメニューをゆっくりと吟味したい。「揚げ湯葉と海老の腸粉」(1,800円)は、一度は味わってほしいこの店のオリジナル。「ハニーローストポーク」(4,400円)や「担々麺」(1,800円)など、友達や家族でワイワイと楽しみたくなるメニューばかりだ。

住所:東京都千代田区丸の内3-2-3 二重橋スクエアビル2F

電話:03-6269-9818

営業時間:平日ランチ11:15~15:00(14:30L.O.)、ディナー17:00~22:00(21:00L.O.)、土日曜・祝日11:00~22:00(21:00L.O.)

元旦休

*ご紹介したメニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2024年6月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「初夏の丸の内でオリジナル点心を」。