今月の一皿

NYに誘う、
Tボーンステーキ

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

東京・恵比寿の歴史は古い。かつては大名の下屋敷が点在していて、伊達町と呼ばれていたこともあるらしい。元サッポロビールの工場跡地だった場所は、まだ僕が学生だった頃の1980年代半ば、引き込み線の客車の中がビアホールになっていて、よく友達と飲みに行った。その地が再開発で「恵比寿ガーデンプレイス」に生まれ変わってもうすぐ30年になる。

ドライエイジング・ステーキで有名な、ニューヨークの『ピーター・ルーガー』がここに誕生したのは1年半前だった。風格のある赤いレンガの建物に入ると、大きなレセプションがある。今日はそこから3階の席に通された。

メインダイニングの2階を見下ろす、ちょっと特別な席だ。ここはこの夏頃より会員制フロアになるそうだから、ますます貴重な席。吹き抜けの天井も、席の間の空間の作り方もまさに本店そのもので、重厚感が漂っている。

「今月の一皿」に選んだTボーンステーキは、左側にフィレ、右にサーロインが堂々と並ぶ。「ドライエイジングだからミディアムかミディアムレアが一番のお勧めです」と、料理長の高知尾文彦さんが教えてくれた。

「日本は生食文化なのでレアを好まれる方が多いのですが、ここではしっかり噛んで肉の旨みを存分に味わっていただきたいです。歯切れのよさ、繊維が裂けるような触感、そして香りが自慢です」と高知尾さん。

「ブロイラー」という特別なオーブンマシンで表面を高温で焼いてカリカリに。そのクリスピーな食感と熟成肉ならではの軟らかいテクスチャーの違いが印象的だ。プライムグレードの肉の中から目利きがさらに厳選した肉を仕入れ、熟成の仕方、塩加減、焼き加減、すべてを本店と同じにしている。

サイドディッシュの牛脂で揚げたフライドポテトは、塩コショウはもちろん、特製のルーガーソースで手が止まらなくなる。個人的には前菜のベーコンの厚切りがジューシーでとても好きだ。

実はランチのみのメニューにハンバーガーがある。熟成肉とフレッシュなチャックアイロールを使用した、つなぎなし100パーセントビーフのパテをシンプルなバンズに挟み、トマトやオニオン、チーズなどを好みでトッピングする。こちらにもルーガーソースをかけて……。きっとニューヨークにいる気分になれるはずだ。

ピーター・ルーガー・ステーキハウス 東京

STEAK FOR TWO(時価。取材時は32,000円)。毎週の買い付け値と為替相場によって価格は変動となる。ランチタイム限定のルーガー バーガーはフライドポテトとスライスオニオン付きで3,200円。写真は5種類のトッピングからアメリカンチーズ(300円)とスライストマト&レタス(300円)をチョイス。ルーガーズ スペシャル “ホーリーカウ” ホット ファッジ サンデー(2,100円)で締めくくれば、満腹&満足になること請け合いだ。*価格はすべて税込・サービス料別です。

住所:東京都渋谷区恵比寿4-19-19

電話:03-6277-4336

営業時間:ランチ11:00~15:00(14:00L.O.)、ディナー17:00~23:00(21:30L.O.)

定休日:年末年始

*ご紹介したメニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2023年7月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「NYに誘う、Tボーンステーキ」。