今月の一皿

南米が薫るイタリアン

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

シェフはベネズエラ生まれ。イタリアンでありながら、随所に南米のアクセントを効かせたここでしか楽しめない味。今宵も目黒川沿いを歩いて店をめざす

先月号では連載200回を記念して新潟を旅してきたが、再び都内に戻り、早速とても居心地がいいレストランに出合った。東京で必ずランキング上位に位置する桜の名所、目黒川沿いにあるイタリアンだ。

桜の季節は終わってしまったが、今は新緑が綺麗で窓際の席はいつも取り合いだ。店名の「unito(ウニート)」の意味はイタリア語で「つなぐ」。何をかというと、イタリアと南米を料理でつないでいるのだ。

オーナーシェフの岡野健介さんはベネズエラ生まれ。幼い頃に帰国してからもベネズエラと関わりを持ちつつ、イタリア・トリノの星付きレストランで修業した。だから日本の豊かな食材、イタリア料理の知識、そしてベネズエラの良さを組み合わせた料理は三国一体で、ほかにはない楽しさと美味しさがある。

ベネズエラといえばラム酒が有名だが、それに負けないくらいバナナも有名だ。「今月の一皿」には、そのバナナの葉を使ったメイン料理「ビゴール豚ヤシ殻のコトレッタ バナナの葉の香り」を選んだ。

シェフがテーブルで鉄鍋の蓋を開けると、あたり一面にバナナの葉のちょっと甘い香りが広がる。ヤシ殻のパン粉をつけて豚肉を一度焼いてからオーブンに入れ、最後にバナナの葉で瞬間的に燻製にする、手の込んだ一皿。豚肉の甘みが特徴的で、しっとりとやわらかく、とても優しい味だ。

北海道の生産者、ジェットファームから取り寄せたアスパラを使った前菜「グリーンアスパラとパルミジャーノとグアサカカ キビのクロケッタと生ハム」は、生アスパラとコンフィしたアスパラを2種類盛り付け、アボカドを使ったベネズエラのグアサカカソースを絡ませる、これまた三国を融合した料理である。さっぱりとしたアスパラに、風味のあるグアサカカソースがアクセントになっていて、初夏のイタリアを感じさせてくれる。

パスタは正統派もあるが、ちょっと捻ったものもありのお楽しみである。これからの季節は食材も豊富になるので、満足すること間違いなし。

オーナーシェフ 岡野健介氏

岡野シェフの料理は随所に工夫があり、視覚にも訴えてくるラインナップで贅沢だ。中目黒という場所柄、女性客も多く、デザートにも力が入っているのは見逃せない。

unitoは一皿一皿が心にゆとりをもたらしてくれる、時を忘れてゆっくり過ごせる空間だ。

unito

目黒川沿いに大きく取られた窓とアーチを描く柱が印象的な店内で、時間を忘れてゆっくりと食事を楽しみたい。ランチコース チェーレレ7,700円~、ディナーショートコース10,000円、ウニートコース13,200円、イタリア キアニーナ牛フィレ肉をメインにしたコース17,600円。*すべて税込・サービス料別

住所:東京都目黒区青葉台1-23-3 青葉台東和ビル2F

電話:03-3715-4040

営業時間:ランチ12:00~13:00(L.O.)、ディナー18:00~20:00(L.O.)

定休日:水曜、月2回不定休

*ご紹介したメニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2025年7月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「南米が薫るイタリアン」。