今月の一皿

黒岩土鶏の焼き鳥

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

ピクチャーウィンドウの先には、ライトアップされた東京駅と丸の内駅前広場が広がる。数年かけてリニューアルした東京駅は広々としたとても気持ちのいい名所になった。こんな絶景を眺めつつ、東京では珍しい「黒岩土鶏」を味わえるのが、ここ『鳥歐』だ。

新丸ビルの5階には、おでんの名店や新しいイタリアンなど、グルメな店が並ぶ。どこに入ろうかと迷うが、その並びにひときわ目立つ鳥の絵が掲げられた店がある。そこが『鳥歐』の入口だ。店に入ると、焼き場を囲むようにカウンター、東京駅が見える大きな窓側にテーブルが並ぶ。いくらカウンター好きの僕でも、ここではやはり窓際が特等席だ。

「焼き鳥×ジビエ×ワイン」というメニューの最大の特徴は、なんといっても「黒岩土鶏」だ。それは、宮崎県児湯郡にある尾鈴山の中で、黒岩正志さんが放し飼いしている鶏。なんと通常の3倍近く、120日間も育てた後に出荷する。

そして、「土鶏」の名前の由来は、鶏が土を食べること。ちょっと驚きだが、ここの山の土には天然の抗生物質が豊富に含まれていて、鶏たちは具合が悪くなると土を食べて体調を整えるらしい。このナチュラルな環境と自然界のパワーは、もう「すごい」の一言だ。

焼き鳥

さて、令和元年初の「今月の一皿」は、その黒岩さんの鶏の「焼き鳥」。なんともきれいな生肉をていねいに焼き上げた串は、どれもこれも素晴らしい。それぞれがシンプルでいて濃厚だったり、あっさりだったり、すべての串で少しずつタレや塩の味を変えている。好みにも応じてくれるが、ここはお薦めで食べたほうがよい。

ジビエ

稀少部位のソリは皮がカリカリで、一口噛むと熱々の肉汁が口の中にあふれ出る。白レバーは全く臭みがなくてとろけるようだし、手羽先の弾力と旨みは格別である。黒岩土鶏、すごい!

お口直しと店長がもってきた「鶏いくら」は、卵黄の醤油漬けを軍艦巻きのようにして食べる。口直しどころかこれも主役級の味だ。マタギから直接届くというジビエも、鹿や猪、鴨などをシンプルに炭火で焼く。顔の見える生産者とのつき合いだからこそ、新鮮な食材の力を活かしたシンプルな料理が映えるわけだ。

店内
ワイン
入口

自然派が中心のワインはすべて生産者の畑を訪問して選んだものしかなく、シャンパーニュから白、赤と、種類も豊富だ。実は締めのラーメンも人気の一品。鶏の出汁が効いたスープもまた絶品。ぜひ、お試しあれ。

鳥鷗

ディナーのお薦めは、黒岩土鶏の焼き鳥とジビエが味わえる「鳥歐コース」(5,148円/税込)。前菜、サラダ、鶏いくら、焼き鳥、ジビエなどのほかに、締めには小ぶりのラーメンか親子丼もついている。自然派ワインと東京駅の眺めとともに、ゆっくりと味わいたい。

住所:東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸ビル5F

電話:03-6269-9435

営業時間:月~金曜/昼 11:00~14:00(13:30L.O.)

夜17:00~23:00(22:00L.O.)、土曜11:00~23:00(22:00L.O.)、

日曜・祝日11:00~22:00(21:00L.O.)

不定休

  • 新型コロナウイルスの感染症の影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。

*掲載情報は2021年11月時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「黒岩土鶏の焼き鳥」。