今月の一皿

定番に加えるひと手間

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

平成14年に幕を閉じた『西洋膳所ジョン・カナヤ麻布』をご存知だろうか。昭和から平成の時代に食通の者だけが知る、粋で艶のあるレストランだった。令和の時代にあれば、間違いなく予約の取れない名店になったことだろう。

今日のお刺身「本鮪」「アオリ 烏賊」「金目鯛」

その『西洋膳所ジョン・カナヤ麻布』を運営していた『金谷ホテル観光グループ』が、〝和敬洋讃(Eastmeets West)〞という独自の視点で千代田区平河町に再びレストランをオープンした。僕にしてみれば、あの名店がモダン・ジャパニーズとして、再登場したようだ。懐かしく想う人も、今の時代に合った新しい食のあり方を体験したい人にも、まずはお試しいただきたいと思う。

オープンして間もない店内には、ほどよい緊張感がある。支配人の徳永克典さんと料理長の渡邊直博さんの凛とした姿勢が、新しい店に対する意気込みの表れだ。

かなや特製ビーフシチュー
今日のショコラ山椒の味

今日のお刺身は「本鮪」「アオリ烏賊」「金目鯛」で、それぞれにひと手間の工夫が施されている。「お刺身は醤油をつけないで召し上がってください」と渡邊料理長。サクラチップのスモークだったり、卵黄醤油に漬けてみたり。または、西洋ワサビで甘さを引き出したり、辣油を混ぜてみたりと、刺身本来の味を損なうことなく、素材のうまさを引き出す演出がある。見た目も実に華やかだ。

徳永克典さん
店内

「かなや特製ビーフシチュー」は、料理長の想いが詰まった一皿。『鬼怒川金谷ホテル』や箱根の『KANAYA RESORT HAKONE』にも同じメニューがあるが、実は味付けが少しずつ違うらしい。平河町では、味噌と醤油を隠し味にして大根を添え、まろやかさを前面に出している。大根は、おでんに見立ててかんずりとセリで季節感を演出。洋食のビーフシチューに、ほんの少し「和」を意識した味付けなのだと思う。
コースの最後に出される今日のショコラは山椒の味。気に入ったら帰りに併設のショップで買えるという楽しみも、ここにはある。

平河町かなや

お刺身、ビーフシチュー、そして、オリジナルのショコラも、コース(10,000円と15,000円)に組み込まれている。5つの個室のほか、カウンター席もあり、接待からプライベートまで幅広く利用できる。
*価格は共に税・サービス料抜きです。

住所:東京都千代田区平河町1-5-9 厚生会館1階

電話:050-3187-9581

営業時間:ランチ11:30~14:30(L.O.13:30)、
     
ディナー17:30~23:00(L.O.21:30)

定休日:日曜・祝日・隔週土曜日

  • 新型コロナウイルスの感染症の影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。

*掲載情報は2020年1&2月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「定番に加えるひと手間」。