今月の一皿

ゴルゴンゾーラを点心に⁉

写真・岡村昌宏 文・下谷友康

Photographs by Masahiro OKAMURA

Text by Tomoyasu SHITAYA

「桃季成蹊」。桃や季の花は美しく、その実はおいしいために自然と人が集まり、道ができる、という意味だ。
『赤坂 桃の木』は、おいしい料理に大勢の人が集まってほしいという願いを込めた店名だ。長らく東京・港区三田で店を構えていたが、2020年より千代田区紀尾井町にて、装いも新たにオープンした。店主でありシェフの小林武志さんが、以前と変わらず笑顔で迎えてくれる。だが、その料理は、さらに優雅に、さらに繊細でていねいに、そして、おもしろくなった。

奶酪水餃子

三田時代と違うのは、コース主体になったこと。「今月の一皿」はその中から点心の「奶酪水餃子」という、なんとゴルゴンゾーラチーズと海老飴の水餃子だ。実は10年以上前から小林シェフの頭の中にはそのアイデアがあり、ずっと温めていた秘蔵のメニューだそうだ。移転後は、今までのお客様に加えて新しいお客様との出会い、そして新しい食材との出合いにより、中国料理の幅を新発想で広げたいとの考えで、満を持しての登場だ。

海老にゴルゴンンゾーラを練り込んだ餡を、強力粉にホウレン草のアオヨセを混ぜた皮で包んだ水餃子を、中国ハムの出汁がほんのり香るスープに浮かべている。仕上げトリュフオイルをたらり。熱々を口に入れて目を瞑ると、一瞬フレンチを食べているような錯覚に陥る。
なるほど、白ワインがよく合うわけだ。

香箱蟹の紹興酒漬け
清炒臺灣A菜

季節ものの「香箱蟹の紹興酒漬け」は、素材にこだわった一皿。定番の上海蟹ではなく、日本の素晴らしい食材・香箱蟹を使うことで、より洗練された気品を感じる味わいとなっている。

こうしてほとんどの食材は日本の季節ごとのものを選んでいるが、あえて台湾から仕入れているものがある。それが青野菜だ。大陸の水と土で育ったそれは、日本の野菜にはないトウモロコシのような甘さと香りがある。「清炒臺灣A菜」は、自家製干し肉と台湾A菜を使った炒め物。
シンプルな塩味に、どこかほっとさせられる。

小林武志さん
店内

実は三田時代に僕も何回か食べたことのあるアヒルの舌やピータンなども、「ご相談ください」と小林シェフ。変わることのない卓越した料理手法と新しい素材へのチャレンジは、これからがますます楽しみだ。
最後に、店内奥の個室は、春になると満開の桜が見える特等席だと、お知らせしておこう。

赤坂 桃の木

夜のスタンダードコースは、15,000円。そのほかにも、フカヒレや北京ダック、アワビを取り入れたコース(22,000円~)などを多彩に取り揃える(フカヒレコースは4日前までに要予約)。ランチは12,500円(シェフお任せコース)のほかに、ディナーと同じ15,000円のコースも6名からオーダー可能。三田時代同様、充実のワインメニューも楽しみの一つだ。
*価格はすべて税込です。

住所: 東京都千代田区紀尾井町1-3 紀尾井テラス3F

電話: 050-3155-1309

営業時間: ランチ11:30~14:00(2日前までに要予約)、
     
ディナー17:30~22:00(L.O.21:00)

定休日: 水曜、その他臨時休業あり

  • 新型コロナウイルスの感染症の影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。

*掲載情報は2021年1&2月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「ゴルゴンゾーラを点心に⁉」。