今月の一皿

神楽坂でリヨンの旅を

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

海外で美味しい料理が味わえなくなって、そろそろ3年が経とうとしている。しかし、日本国内にも異国情緒たっぷりの素敵なレストランがたくさんある。

美食の街フランス・リヨンの料理をそのまま味わえるのが、ここ『ルグドゥノム ブション リヨネ』。東京・新宿区神楽坂のとある小路に入ると、赤ワインのような色をベースにしたオーク調の味わいのある店先が見える。その中の活気溢れる空間に、自然と引き寄せられる。

14時を過ぎた頃でも小さなテラスで老夫婦が食後酒を味わっていたり、店内ではフランス人の素敵なマダムがデザートを食べながら談笑していたりと、まさにリヨンを旅しているような錯覚に陥る。壁面に飾られたたくさんの写真やアンティークの皿も、レトロな内装も、床のタイルや調度品もこだわりを感じさせ、なんだかとても心地よくなるのである。

リヨン風クネル モリセットゥおばあさんスタイル ナンチュアソース

人懐っこい笑顔が魅力的なオーナーシェフのクリストフ・ポコさんおすすめの「リヨン風クネル モリセットゥおばあさんスタイル ナンチュアソース」は、この店の名物である。カワカマスという白身魚のすり身にオマール海老の濃厚なソースを合わせていて、口溶けのよい一品だ。

皿の底にはバターライスが敷いてあり、一緒に食べるとより一層コクが増し、余韻が残る。肉をメインにしてもいいが、それに匹敵するほどの濃厚なクネルは、ここでしか食べられないだろう。

伝統的なブーダン・ノワールとリンゴ
リキュールの女王

「伝統的なブーダン・ノワールとリンゴ」は、ご存じ豚の血のソーセージ。苦手の方も多いと思うが、この店のブーダン・ノワールはとても食べやすい。ジャガイモのピューレやリンゴのペーストを添えて口に運べば、滑らかで優しい味に変身する。玉ねぎや調味料の配分が抜群で、ふわっとした味わいが特徴である。

クリストフ・ポコさん
店内

普段、私たち日本人はあまり食べることのないリヨン料理。その魅力は素材の持ち味が活かされていることであり、ブルジョアと大衆の融合から生まれたという料理は、実は前菜からデザートまで親しみやすいものなのだと教えられた。

テラス席も窓を開放するメインダイニングも、これからが気持ちのよくなる季節だ。食後には、ぜひチーズなどと共にフランスを代表する食後酒の一つ、シャルトリューズという「リキュールの女王」を味わってほしい。

ルグドゥノム ブション リヨネ

「リヨン風クネル モリセットゥおばあさんスタイル ナンチュアソース」は、ポコシェフのおばあさんの思い出の味。フランスを代表するシャルキュトリのブーダン・ノワールも、ここではリヨン風のアレンジに。「伝統的なブータン・ノワールとリンゴ」。いずれもランチ3,500円、ディナー5,500円(共に税込・サ別)のコースで選択可能。

住所:東京都新宿区神楽坂4-3-7

電話:03-6426-1201

営業時間:ランチ11:30~14:00(L.O.)、ディナー18:00~21:30(L.O.)

定休日:月曜、第1・第3火曜

  • 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。

*掲載情報は2022年5月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「神楽坂でリヨンの旅を」。