今月の一皿

常連に愛される老舗の定番

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by ​Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

店名はイタリア語で前菜(アンティパスト)とワイン(ヴィーノ)の掛け合わせ。ワインを飲みながら色々とつまみたい人には、たまらない響きである。思いたった時にふらっと訪れたい、アットホームなイタリアンだ

いい店の僕なりの定義は、アラカルトがあること、そして時間に縛られないこと。この2点に限る。もちろんコース料理を否定しているわけではないが、いつの間にか「一斉スタート」「コース料理」「時間指定」が一般的になってきた。楽しいメンバーで、好きな時に、好きなだけ、好きなものを……これが食事を楽しむ大前提だと思っている。

さて、そんなわがままなお願いに応えてくれるのは、今年で28年目になる『ANTIVINO(アンティヴィーノ)』だ。明治通りの並木橋交差点から青山に向かう坂の途中、オシャレなグリーンの軒先が目印だ。渋谷・青山界隈にはいくつもの名店があったものの、閉店になったり再開発で移転したりと、昔と比べて随分と様変わりしたが、ここは安定の場所だ。

「メニューはあってないようなものです」とマネジャーの竹腰周至さん。メニュー名ではなく、「アレで」と注文する常連も多いそうだ。長年にわたってお客様に支持されているものが自然にメニューに残っているというのも、おもしろい。

もちろん、それ以外に、季節の食材を使った毎月変わるメニューもたくさんある。「今日はどこにいこうか?じゃあいつもの『アンティヴィーノ』にしよう」とお客様のライフサイクルの一部にここがある、そんな店をめざしていると竹腰さんは熱く語る。

「今月の一皿」は、そんな要望にぴったりの「お好みアンティパスト」。前菜のメニューから少しずつ、好きなものを選べる一皿だ。今日は「地鶏のインボルティーニ」「ヒラメのマリネ」「枝豆とウニのムース」「グリーンアスパラのオーブン焼き」「近江牛のカルパッチョ」を。

「オーソドックスな料理を中心に、和食やフレンチのエッセンスも取り入れています」と、入社後5年という早さでシェフに抜擢された児島亘さん。

「プッタネスカ アンティヴィーノ風」は、揚げナスとベーコン、トマトソースでつくるのがこの店のスタイル。誰もが知っている俳優の常連さんとのアイディアコラボメニューだそう。今やこの店の定番である。

メインは「近江牛の炭火焼き」を。味つけは塩胡椒とレモンだけで、肉の風味を存分に味わえる一皿だ。年配者にはやわらかい部位を、若い方には肉をしっかりと感じられる部位を選ぶなど、まさにパーソナルだ。

ワンちゃんも一緒に入れるテラス席にライブ感のあるカウンター、そして個室にメインダイニングと、それぞれのシーンで席を選べるのも、実にうれしいものだ。

ANTIVINO

ワインがついつい進んでしまう「お好みアンティパスト」は3~5品の盛り合わせで2,400円~。定番の「スパゲッティ プッタネスカ アンティヴィーノ風」(1,800円)のほか、パスタのメニューもたくさん。お好みのパスタの盛り合わせにも対応してくれるのがありがたい。メイン「近江牛の炭火焼き」(100g、3,800円)もぜひ一度味わっていただきたい、秀逸な焼き上がりだ。*価格はすべて税込。

住所:東京都渋谷区東1-14-13 1F

電話:03-5466-1030

営業時間:ランチ11:30~14:00(L.O.)、ディナー17:30~22:00(L.O.)

定休日:日曜

*ご紹介したメニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2024年10月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「常連に愛される老舗の定番」。