今月の一皿

一皿にぎっしり、優しい贈り物

写真・栗林成城 文・下谷友康

Photographs by ​Shigeki KURIBAYASHI

Text by Tomoyasu SHITAYA

東京タワーを窓の向こうに眺める麻布十番の隠れ家レストラン。新鮮な野菜を中心に構成されるコースとナチュラルワインはあなたの心と身体への最高の贈り物

「食事は好きなものを、好きな時に、好きな人たちと」が、僕のディナーのコンセプトだ。そして、なによりもご一緒する人たちに楽しんでほしいし、自分自身も楽しみたいと、いつも思っている。

東京の麻布十番はコンパクトな街の中に、各国のレストランが軒並みそろっているおもしろい街だ。以前この連載で取材したことのある『リナシメント』という店が新コンセプトでこの街に出店したと聞き、出かけてみた。東京タワーを遠くに臨むまだ新しいビルの9階で、『GIFT』という店名にふさわしい、大切な人と大切な自分に贈りたくなる、まさに"ギフトレストラン"だ。

圧巻の「30品目の最高に楽しいサラダ」は、それぞれが一つの料理として完成されている。1部と2部にメニュー上では分かれており、味のバランスとコースの流れがとてもスムーズで、実によくできている。

幕間のように一旦ゼリーで休んで、第2部がはじまる構成もユニークでおもしろい。すべてが信頼する生産者から届く旬な野菜でつくられていて、これからは特に初夏を感じられるサラダになることだろう。本当に楽しい一皿だ。

次に続いたのは「ピュアトマトパプリカソースのパスタ」だ。新ゴボウや新レンコンといった根菜がパスタの下に隠れている。コールドプレスされたトマトのジュースで、とてもクリアでピュアなソースをつくり出している。

「お好みで青唐辛子のソースを絡めてください」と山川大輔シェフ。なるほど根菜に辛味が混じり合い、トマトとちょっと刺激的な味変が楽しめる。

この日のメインは「せんば牛のフィレの炭火焼き」だった。「せんば」とは"千葉"の音読みだそうで、あまり流通していない珍しい牛肉だという。実は隠し味に味噌を使っていて、その香りがほのかに立つ。ほっとする一皿だ。

オーナーでソムリエの三浦幸一さんの出身地の岐阜県は、味噌文化の中心地。そこからヒントを得たちょっとしたアイデアが、肉好きの大人にはほどよい変化球になることだろう。

ワインも流行りのオレンジを含め、ナチュラルワインがそろっている。ここは「明日の自分に優しい」レストランでもある。

GIFT

ビタミン、ミネラルたっぷりの「30品目の最高に楽しいサラダ」は、目にも舌にもうれしい前菜。1種類ずつ食べ進めるごとに、さまざまな驚きや発見がある。ナチュラルワインと会話を楽しみながら、ゆっくりといただきたい。シンプルなパスタとメイン、そして甘さ控えめなデザートと、ほどよくお腹が満たされるコース(9,900円/税込)がいただけるのは、外食が多いビジネスパーソンにはありがたい存在だ。

住所:東京都港区麻布十番3-10-5 9F

電話:03-6435-3727

営業時間:ランチ 12:00~(13:00L.O.)、ディナー18:00~(21:00L.O.)

定休日:日曜/月曜ランチ

*ご紹介したメニュー等は取材時のもので、季節によって変更となる可能性があります。事前にお店にご確認ください。

*掲載情報は2024年8&9月号掲載時点のものです。

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下谷友康さんが綴るコラム【今月の一皿】。今回は「一皿にぎっしり、優しい贈り物」。